【七夕賞回顧】機動力と持続力が光ったアスクナイスショー “福島名人”田辺裕信騎手の戦略も冴える
勝木淳

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自ら動いて活路を見出したアスクナイスショー
サマー2000シリーズ・七夕賞はアスクナイスショーが制し、重賞初制覇。2着マイネルモーント、3着オニャンコポンで決着した。福島といえば田辺裕信騎手。ラジオNIKKEI賞に続き、七夕賞も鮮やかに田辺マジックがさく裂した。
これで田辺騎手は2023年福島記念から5連続で重賞勝利を福島であげた。約2年半、福島でしか重賞を勝っていないのは意外だが、それにしても福島の重賞で強い。ラジオNIKKEI賞のサノノグレーターは差し切り、そして七夕賞は2番手から抜け出し。まさに変幻自在で、馬場と展開読みが光る。田辺騎手の長所をいかせる。それが福島競馬場だ。
福島芝2000mはスタートから初角までが長く、突っ込んで序盤から入りがちなコースだ。中山芝2000mや阪神芝2200mのイメージに近く、最初の正面スタンド前で繰り広げられる攻防したいで、息が入りにくくなり、最後はスタミナ勝負の様相を呈する。
今年の序盤600mは34.3。2022年エヒトが勝った年に記録された34.4に近く、スタミナ比べになる展開だった。良馬場だった22年の1000m通過は58.5。今年は稍重で57.8。ハイペースは明らかだった。
しかし、このラップを刻んだのは大逃げの形に持ち込んだショウナンマグマだけ。そこについて行かず、2番手に収まったアスクナイスショーは猛ペースを避けることに成功した。
この時点でレースの主導権は田辺騎手が握っていた。この位置取りも絶妙だったが、田辺マジックはここから。早めに苦しくなるだろうショウナンマグマをどのタイミングで追うのか。
おそらく下がってくるのを待てば、後ろから追いあげられ、リードをつくれない。ショウナンマグマが飛ばしたことで生まれた物理的な差を利用しない手はない。だから田辺騎手はあえてアスクナイスショーに早めに追いかけさせた。
自ら早めにつかまえにいく形をとることで、後ろに間合いを詰めさせなかった。これが直線でのリードにつながった。ラスト400m11.9-11.9とアスクナイスショーがロングスパートにこたえ、最後まで失速しなかったのも勝因。小回り向きの機動力と持続力が冴えた。
シルバーステートの適性
アスクナイスショーの父シルバーステートはこの勝利で重賞8勝目。七夕賞はセイウンハーデスが勝った23年以来早くも2勝目。セイウンハーデスも好位から抜け出す形で勝利しており、アスクナイスショーに重なる。
産駒全体の成績をみても、福島、中山の勝率がやや高く、位置取り別では逃げ、先行が圧倒的に強い。ディープインパクト一族のなかでも小回り先行に適性がある産駒が多く、切れるより粘るのイメージだ。
自身の現役時代も逃げ、先行から速い上がりを繰り出していた。おそらく母系に入ったロベルト系シルヴァーホークやニジンスキーの血の影響を受けている。
あるスタリオン関係者にディープインパクト系の特徴について質問したことがあるが、ディープインパクト産駒の種牡馬はサンデーサイレンスの直仔とは異なり、適性にばらつきがみられるという。
サンデーサイレンスの血をつなぐ種牡馬もいるが、どちらかというと母系の適性を伝える種牡馬が多い。シルバーステートもそんなイメージでよさそうだ。ディープインパクトの切れ味より持続力。小回りに強い。
ディープっぽくないが、そこがディープインパクトの偉大さでもある。バラバラな適性をもつ種牡馬が多いということはそれだけ枝葉はあらゆるカテゴリーで伸びる。
オニャンコポン、2年連続3着
2着マイネルモーントは福島を得意とするゴールドシップ産駒。特に開催後半や秋開催、芝中長距離でまとまって走る。全体的にタイトな流れになったことで、その特性をいかせた。
マイネルモーントは速い時計に対応できるクチではあるが、もう少し上がりがかかってくれば、逆転の目もあったのではないか。産駒は福島に強いものの、マイネルモーントはもう少し広いコース寄りの適性をもっており、コーナリングなどでその差も出たか。
3着オニャンコポンは昨年11番人気3着で今年は15番人気3着。偉いのひと言につきる。直近は4戦連続ふた桁着順中であり、七夕賞で引退する予定もあったそうだ。なぜか七夕賞だけ走る。
今年は上がり最速を記録しており、この時期の福島が合う。七夕賞特有の前半が速い流れも終い勝負のこの馬に向くということだろう。とはいえ、7歳で再度好走したのは頭が下がる。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。
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