【函館記念回顧】“令和のまくり屋” ファウストラーゼンが復活勝利 豪快一辺倒から脱却、新境地を開いた一戦
勝木淳

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データと格言がいきた函館記念
サマー2000シリーズ北海道編の函館記念はファウストラーゼンが制し、重賞2勝目。2着ケリフレッドアスク、3着ピースワンデュックで決着した。
函館名物のハンデ戦は今年もシビアだった。トップハンデ58キロを背負ったのはマジックサンズ、チャックネイト、アラタ、デビットバローズの4頭。マジックサンズこそ4番人気だったが、残る3頭は年齢や近況などが嫌われてか8番人気以下となっていた。
函館記念のトップハンデは厳しいというデータはもはや定説となっており、ファンもその点を踏まえて予想したようだ。特にマジックサンズは戦歴としては上位人気3頭より上であり、もっと人気になってもおかしくなかった。
一方で結果は5着止まり。スムーズに回ってこられなかったとはいえ、馬券圏内をはずした。みんな馬券偏差値が高い。
勝ったのはマジックサンズと同じ須貝尚介厩舎のファウストラーゼン。「同厩舎複数出しは人気薄を狙え」といういかにも古典的なアプローチでとれた。データを重視する組み立てと古より伝わる格言。函館記念のヒントはこの二つの交差点上にあったのは興味深い。
開催終盤から開幕3週目の折り返し地点に移った函館記念は1、3着馬が内枠であり、決着時計は1:57.7と速く、やはりレースの設定は確実に変化した。昨年、1:57.6で勝ったのは須貝尚介厩舎の10番人気ヴェローチェエラ。今年も同じ10番人気のファウストラーゼンが勝ち、レースの組み立てまでほぼ同じ。
簡単だったといえなくもないが、競馬は再現性が極めて低い競技なので、そもそも同じパターンだから買いとはならない。この辺がいかにも難しい。
直線までは完璧だったファウストラーゼン
一方でレース全体の展開は昨年とはやや異なる。内のピースワンデュックが競りかけず、序盤はケイアイセナの単騎逃げ。武豊騎手は極端にペースを落とさないが、オーバーペースにもならない。
昨年の前後半1000m58.1-59.5に対し、今年は58.5-59.2。前半が0.4遅く、後半0.3速い。わずかな差ではあるが、今年の展開利は先行勢にあった。それを自分の手元に引き戻したのがファウストラーゼンのまくりだった。
ホープフルSや弥生賞ディープインパクト記念ではやや荒っぽいマクリで、あえてレース展開を破壊することで好走してきたが、今回のまくりはそれらとは違う。3コーナーで進出しはじめ、4コーナーで先団にとりつく実にスマートなマクリであり、ファウストラーゼンの気性の成長も感じた。
それだけに直線の御法はいささか残念だった。あのままキレイに抜けていれば、小林美駒騎手は大絶賛されただろう。カテゴリー1の裁定基準は被害馬の脚色を重視するため、降着の発生頻度は極めて低い。そこを理解しつつも後味の悪さは残った。せっかくの重賞初制覇だっただけにもったいない。
小林美駒騎手は思い切りのいい先行、それも逃げが魅力の騎手だが、ここにきて差す競馬も目立ちはじめており、確実に腕をあげている。ファウストラーゼンのまくりは彼女が身につけた戦略と腕によってなされた。
それこそ逃げ差し自在になりつつあり、この先ももっと勝てる騎手になれる。本人も反省しきりだろうが、萎縮せずいい点は捨てないでほしいと願う。
ムラ駆けからの脱却
ファウストラーゼンは友田牧場の生産馬。静内から少し浦河方面に進んだ新ひだか町にある家族経営の牧場で生まれた。友田牧場が輸入導入した祖母プレザントケイプの2番仔が母ペイシャフェリスだった。
ペイシャフェリスは芝1400、1600mで4勝をあげたオープン馬で、妹ペイシャフェリシタもキーンランドC3着などスプリント路線でオープンまで駆けあがった。ファウストラーゼンが代表例だが、プレザントケイプの孫たちは勝ち上がり率が高く、友田牧場の幹となる牝系だ。
やや短い距離で活躍する傾向もあり、その辺は気性も関係していそうだ。ファウストラーゼンも気性のコントロールが難しそうだが、どうやらここにきて改善されつつある。この先、どんな成績になるか分からないが、これまでは安定して走らないムラ駆けタイプだったので、どう変化していくのか注目したい。
逃げずに結果を残したピースワンデュック
2着ケリフレッドアスクは対照的にコーナーで動きすぎず、直線勝負にかけた。リズムを整え、ラストの爆発力につなげる北村友一騎手らしい手順であり、ゴール前の末脚は際立っていた。ファウストラーゼンに寄られた不利は悔やまれる。
一方で昨年は紫苑Sを逃げ切った馬であり、1年足らずで脚質転換に成功したのは特筆できる。1800mより2000mの方が脚を溜めやすそうであり、今後もこの路線で活躍できるだろう。
3着ピースワンデュックは逃げずに番手から進め、逃げるケイアイセナの内を突いて伸びてきた。逃げが好走条件というタイプだったので、この形は大きい。先手争いで猛ペースに巻き込まれるリスクを減らせれば、成績も安定してくるのではないか。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。
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