【NHKマイルC回顧】前半33.7の激流が牝系の底力を呼び起こす ロデオドライブが混戦を断ち初戴冠
勝木淳

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若さゆえのハイペース
3歳マイル王決定戦NHKマイルCはロデオドライブが1番人気の支持に応え、GⅠ初制覇。ハナ差2着はアスクイキゴミ、3着アドマイヤクワッズで決着した。
昨年、超ハイペースになったこのレースはまだまだ発展途上の3歳スピードマイラー同士の一戦とあって、ペースが非常に読みにくい。ペースを演出しそうなユウファラオは前走チャーチルダウンズCで前半600m35.6と遅い流れをつくり、2着に残った。ハイペースの先行は本意ではない。内枠を利してハナに立つなら、平均ペース程度に落ち着いてくれるのではないか。
そんな読みもあったが、実際はそうはいかなかった。序盤600mは12.3-10.5-10.9、33.7。NHKマイルC30回の歴史のなかで序盤600m最速は33.4。ダノンシャンティが勝った2010年とパンジャタワーの昨年で2回記録された。33.7はシュネルマイスターが勝った年と並ぶ2番目の速さで、労せず速い時計を出せる馬場状態ではあるものの、2区間連続10秒台は若干、威勢がよすぎたか。
200m通過後から600m地点まで10秒台が続いたのは33.4を記録した2回しかない。自然ながら前がかりになってしまうのは3歳同士の戦いではよくあること。先を急ぐのは若さゆえのこと。ゴールを目指して一直線に進んでいくのは清々しい。
よみがえるクラフティワイフ牝系
前がかりになったことで、逃げて17着のユウファラオのほか、先行勢も末脚を伸ばしたくても思うように脚が動かない。そんなもどかしい状況になってしまった。
それでも懸命に粘ろうとする5着ダイヤモンドノット、6着レザベーションの背後が勝利ポジション。前の大きな集団がごっそり下がり、変わって先頭を競ったのがアドマイヤクワッズ、アスクイキゴミ、ロデオドライブの3頭だった。
4コーナー通過順位はこの順で、着順は3、2、1着。1、2着の差はハナ差なので、仕掛けのタイミング云々は関係ない。アスクイキゴミの上がり600m33.5に対し、ロデオドライブの上がり600mは33.3。わずかな差が決め手となった。
ロデオドライブは万能型のキングカメハメハ系の血サートゥルナーリアを父にもち、母のビバリーヒルズはその父スニッツェルの影響か芝1200mで2勝をあげた。牝系でいえばクラフティワイフ牝系。ちょっと懐かしい名前だ。
クラフティワイフはマイラーズCを勝ったビッグショウリ、中山グランドジャンプを制したビッグテーストや重賞2着2回のバトルバニヤンを出した。その枝葉からはトーセンジョーダン、トーセンホマレボシ兄弟を出したエヴリウィスパーの系統に加え、ブリリアントベリーが勢力を拡大した。
ブリリアントベリーといえば、8歳秋に天皇賞(秋)、マイルCSを連勝したカンパニーの母であり、ほかにもニューベリー、レニングラード、ヒストリカルと活躍馬を多く出した。ロデオドライブの母ビバリーヒルズはブリリアントベリーが晩年、この世に送った牝馬だった。
母は短距離だったが、クラフティワイフの一族は中距離に強く、厳しい流れの底力勝負で勝ち切ったのは牝系の影響も感じる。また晩成型や成長力を伝える牝系でもあり、ロデオドライブもこの先、どんなタイプに育っていくか楽しめそうだ。決してマイルが距離の限界ではない。
敗れた馬たちも成長の余地を残す
2着アスクイキゴミは最後、クビの上げ下げの差。紙一重の結果は残念だが、決して悲観することはない。前走のチャーチルダウンズCではスローペースを好位から抜け出し、今回は東京の厳しい流れを差してきた。脚質、適性に幅があり、定まっていない感も伸びしろの証だ。
父はロードカナロアなので、ロデオドライブの父の父と同じ。ロードカナロアの父キングカメハメハは2004年NHKマイルCを5馬身差で圧勝した。次走ダービーも制し、変則二冠を獲得するわけだが、その最大の武器は筋肉の強さ。サンデーサイレンスのしなやかな筋肉に対抗できる強さが売りだった。硬さが目立つとダート、芝では持続性を強みとする。
後半1000m11.5-11.7-11.7-11.5-11.4という流れはいかにもキングカメハメハ系統の武器を発揮できるものだった。アスクイキゴミもまだまだタイトルを上積みできるだろう。
3着アドマイヤクワッズは皐月賞15着からマイルに戻して、息を吹き返した。やはりベストはマイル付近。父リアルスティールはディープインパクト、サンデーサイレンスの流れを汲むが、キングカメハメハ系統に適性が近い。ダートはフォーエバーヤングで証明済みで、芝は今回のような緩急の少ない持続力勝負に強い。距離も流れも得意ゾーンだった。
今回は位置が前だった分、先に仕掛ける形になり、目標にされてしまったが、この馬のベストな形を導けたのは収穫だった。リアルスティールは典型的な1800m巧者であり、アドマイヤクワッズも最終的には1800mまではこなせるようになりそうだ。
3番人気ダイヤモンドノットは5着に敗れた。現状では折り合いを考えると先行策が妥当で、それゆえに厳しい流れに巻き込まれる形になってしまった。とはいえ、陣営のジャッジはまだまだ成長途上。緩さを残す状況で5着に踏ん張ったのはもっと評価すべきだろう。
アルゼンチンの名牝リアルナンバーを祖とするウィキウィキの系統も成長力を伝える一族で、ダービー馬マカヒキも3歳春に一気に成長し、8歳で京都大賞典を制した。ダイヤモンドノットも上位馬たちと同じくさらに強くなる余地を残す。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。
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