【中山牝馬S回顧】エセルフリーダ&武藤雅騎手が人馬とも重賞初V 好枠を生かした先行策が決め手
勝木淳

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ペースが落ちないタフな流れ
中山名物である春の牝馬限定ハンデ戦、中山牝馬Sはエセルフリーダが2番手から抜け出し、人馬ともJRA重賞初制覇。2着ビヨンドザヴァレー、3着パラディレーヌで決着した。
GⅠ馬ステレンボッシュが参戦し、そのハンデは57.5キロ。最軽量アンリーロードとの差は5.5キロあり、結末をみてもハンデ差が作用した面は大きい。勝ったエセルフリーダのハンデは53キロ。準オープンを勝ったばかりの昇級初戦であり、納得のハンデだが、最終的にはこのハンデが効いた。そんな印象の競馬だった。
まず、中山の芝は週中の大雨の影響が残り、重馬場でスタートし、午後は稍重。回復傾向にあったとはいえ、芝のレースでは土の塊が跳ねるような場面が多く、見た目以上にタフな馬場だった。
さらに初角まで距離が短い1800mで大外枠レーゼドラマが注文をつけ、ハナに立ったせいか、ペースが落ちきらない厳しい流れになった。600m通過後は11.8-11.7-11.5-11.8-11.8-12.4。ラストの12.4がそれを物語る。
後半でラップ上昇がみられなかったのは、牝馬にとって重い馬場だったからでもある。流れと馬場がともに厳しい方向に振れた競馬だったため、末脚を伸ばすような軽い適性を持つ馬にとっては辛かった。13着に終わった1番人気アンゴラブラックや末脚身上の10着ボンドガールは好走できる設定ではなかったといえる。
最善手を打てたエセルフリーダ
さて、エセルフリーダは中山4勝目のコース巧者であり、ラストで速いラップを必要としない流れに強い。その強みを全面に活かせた結果だったが、おそらくそれだけでは重賞を勝てない。
決め手はこの厳しい流れに対し、2番手で流れに乗ったこと。枠順を利用し、初角までに早めに2番手を確保した。先をいくレーゼドラマをとらえられる位置であり、後ろの有力馬をけん制することもできる。武藤雅騎手の見事なレースコントロールだった。
JRA重賞初制覇は父の管理馬であり、姉が名付け親、さらにこの日はお母様の誕生日だった。武藤ファミリー最高の一日となった。
エセルフリーダのファミリーにも触れる。母デルマオギンは芝中距離で牡馬相手に2勝をあげたタフな馬であり、その母センターステージはスクリーンヒーローの妹でもある。父グラスワンダーの兄に対し、こちらはスウェプトオーヴァーボードを父にもち、短距離中心だった。この血にハービンジャーが配合され、デルマオギンが誕生した。
3代母ランニングヒロイン、その先ダイナアクトレスから流れる勝負強さにハービンジャーの持続力と体力が加わったのがエセルフリーダであり、2番手追走はおそらくこの血のポテンシャルを引き出す最善手だったのではないか。今後も粘りを活かせる舞台で目を離せない。
引退レースで奮闘したビヨンドザヴァレー
2着ビヨンドザヴァレーは社台レースホースの6歳牝馬であり、これが引退レース。芝マイル戦で4勝をあげ、2年前のターコイズS2着。昨年の中山牝馬Sは4着だった。その後、初ダートのレディスプレリュードで重賞初制覇と非常に能力の高いところを見せてきた。
芝に戻り、JRA重賞ラストチャンスにかけた今回、積極的な立ち回りで流れに乗れた。ラストチャンスも懸命に走り、先頭を追う姿は心打たれるものがある。一方で、中山重賞の成績を考えると、11番人気は人気がなさすぎた。
中山牝馬Sは引退レースに選ばれることが多い重賞だが、ラストチャンスで好走するケースは目立つ。むかしは牝馬の引退レースは消しと言われたが、現在は当てはまらない。つまり、出走は状態面に問題がなく、勝負になると踏んでのものだからだ。関係者のリスクに対する感度が高い証でもある。
3着パラディレーヌは力強く伸びてきたものの、坂を上がってやや末脚が鈍った印象がある。56.5キロのハンデが最後の最後に効いたのではないか。もう少し軽さを求められ、体力を削られるような流れでなければ逆転もあった。ベストは平坦の京都であり、コース替わりや馬場といった設定を見極めて狙いをつけよう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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