【フィリーズレビュー回顧】逆境が引き出した底力 ギリーズボールが前走から巻き返し重賞初V
勝木淳

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ギリーズボールの「心の強さ」
桜花賞トライアル・フィリーズレビューはギリーズボールが制し、重賞初制覇。2着サンアントワーヌ、3着アイニードユーで決着した。今年も例年と同じく大混戦。オープン馬は8頭、残る10頭は収得賞金400万円の1勝馬たち。除外馬8頭と出走すら難しい状況だった。
混戦に距離1400mという設定も手伝い、ハイペースになりがちな重賞だが、今年は前走1600mで逃げたアイニードユーが内からじわっと先頭に立ったことで、ハイペースとまではいかなかった。前半600mは34.2。その後、半マイルにかかる区間も11.5なので、多頭数の1400mとしては平均的な流れで推移していった。
アイニードユーは後ろを引きつけた上で、直線入り口で早めに好位勢を離す形をつくれた。脚を溜めながら後ろを振り切ったので、このまま粘り込めるかと思ったところにやってきたのが内から馬群をさばいてきたギリーズボールだった。
前走は2戦目の難しさが出たか、スタートで遅れ、抑えるのに苦労するという最悪な形になり、自滅してしまった。これを受けてのフィリーズレビューはかなりの勝負だった。
実際、馬体重は10kg減の414kgとギリギリの状態にみえた。さらに多頭数の内枠を引き、案の定、馬群で揉まれた。嫌がる素振りもあり、正直、ちょっと難しいとも思えたが、直線では狭いスペースに果敢に突っ込んで抜けてきた。気持ちを切らさず、さらに闘志を燃やす。そんなギリーズボールの心の強さが勝利をたぐり寄せた。
逆境をはね返す力とは底力のこと。この先の戦いはさらに厳しくなるかもしれないが、この底力は大仕事をやってのける予感すらある。
血統に感じる底力
母フロアクラフトは桜花賞出走こそできなかったが、スイートピーSで2着に入り、オークスではメイショウマンボの5着。その後は芝2000mを連勝し、1400mでも勝ち鞍を上げた。徐々に距離を詰めていったのはスピードコントロールへの工夫だった。本質はマイル前後に適性があったのではないか。
きょうだいには重賞3勝バウンスシャッセ、京王杯SCを勝ったムーンクエイク、最後はオーシャンSを制したコントラチェックがいる。ちょっと折り合いの難しい血統だ。
これまでフロアクラフトにはロードカナロア、キングカメハメハ、ドゥラメンテ、レイデオロとキングマンボ系の血が交配されてきたが、ギリーズボールの父はエピファネイア。はじめて違う系統の血が入った。
サンデーサイレンスの4×3はスピードのコントロールが難しくなる不安もある。ギリーズボールも一族特有の難しさを抱えているものの、その裏側にある負けん気の強さも受け継いでいる。馬群で揉まれる競馬はそれを呼び覚ました。厳しい状況が底力を引き出した結果といっていい。
枠が響いたサンアントワーヌ
2着サンアントワーヌは序盤の攻防で外枠がアダとなった。位置を下げながらもなかなか前に壁をつくれず、落ち着かせるのに苦労した。結果的には勝負所も外を回る形になり、距離ロスが響いた。
最後の最後は鋭く伸びたものの、内を回ったギリーズボールとは立ち回りの差が出てしまった。父ドレフォンらしい持続力の持ち主であり、もう少し流れが速ければ、逆転もあった。
3着アイニードユーは一旦後ろを振り切ったものの、最後の坂が堪えたか、1、2着馬の末脚に屈した。権利はとれたのでミッションはクリアできたが、父ファインニードルの特徴でもある平坦巧者の面が垣間見えた。
北海道、新潟、京都、小倉の勝率が高く、中山と阪神の成績が振るわないため、平坦巧者とされるが、アイニードユーも勝利をあげているように中京の成績も悪くない。今週から春の開催がはじまる中京は中山や阪神より急坂が手前に設置されており、残り200mは平坦になる。おそらくそこで再度加速もしくは粘りを増すため、中京の成績が落ち込まない。
平坦巧者と呼ばれる馬であっても中京はこなせるというタイプがいるのは、コース構造によるところが大きい。アイニードユーもそんな適性を感じる。阪神マイルとなるとちょっと厳しい可能性を感じるものの、工夫ひとつではないか。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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