【チューリップ賞回顧】タイセイボーグが示した成長 持続力勝負の本番でさらなる前進期待
勝木淳

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スローペースのトライアル
桜花賞トライアルのチューリップ賞はタイセイボーグが勝ち、重賞初制覇。2着ナムラコスモス、3着アランカールで決着した。
桜花賞出走の切符は3枚。集った15頭のうち、収得賞金最高は佐賀の6勝馬サキドリトッケンで、JRA所属だとアランカールとタイセイボーグの1000万円。新馬+オープン、ないし新馬+重賞2着の組み合わせだった。
桜花賞出走はみえていたが、ことオークスまで考えるとどうなるか。そういった部分も踏まえ、この2頭とて権利以上に賞金の上積みがほしい。さらに900万円のソルパッサーレ、ナムラコスモスは重賞でどこまで通用するのか手探りの状態であり、ほかは400万円の1勝馬と、どの馬もなんとか3枚の切符を手にしたかった。
チューリップ賞はよほどスピード型の実績馬が出走してこない限り、スローペースになる。いかに3枚の切符を手にするか。シンプルに考えるなら、展開利を味方に粘り込みを狙うか、最後の直線での末脚勝負に賭けるかの2択。飛ばすだけ飛ばしてなんとかしようという発想にはなりにくい。まして舞台は桜花賞と同じ阪神芝1600m。西日本最長の直線と急坂が待ち構えており、3歳春の牝馬にとっては簡単ではない。
先手を奪ったグランドオーパスは前走・河津桜賞でハイペースを演出した一頭。同じ轍は踏まない。序盤は慎重に主導権を握っていく。3コーナーでペースを落とし、じっくり脚を溜める。前半800mは48.6。馬群は一団で進み、各馬が脚を残した状態で勝負所を迎えた。
後半600mは11.3-10.7-11.6。直線を向いて坂下までは10.7。ここで伸びきらないと上位進出はなく、我慢できた先行勢も急坂でさらに我慢できないと残れない。結果的にこの「10.7」への対応が勝敗をわけた。
成長を示したタイセイボーグ
タイセイボーグは外枠から中団で流れに乗り、直線に向いて一気に弾けた。10.7でトップスピードに入り、急坂でも末脚を鈍らせなかった。さすがGⅠ3着馬であり、これまでのレース経験がパワーアップの源泉になった。
デビュー当初は好位から競馬をし、相手が強くなるにつれて位置を下げ、ハイレベルなレースで揉まれることで、その末脚を磨いていった。少し足踏みする形ではあったが、理想的な成長を遂げたといっていい。今回は馬体重10kg増。明らかに力をつけた。
父インディチャンプは2019年に安田記念とマイルチャンピオンシップを勝ったマイル王。ステイゴールド系のなかでも異端の存在だが、その分、仕上がりも早い。産駒は芝1400~1600mを中心に1800mや2000mもこなす。ステイゴールド系らしさも内包しており、懐の深さを感じる。
タイセイボーグはどちらかと言うと持続力型のような戦歴の持ち主で、今回の瞬発力勝負に対応したのは大きい。阪神ジュベナイルフィリーズは得意とする持続力勝負で3着。次は着順を上げてくるのではないか。阪神JFを1:32.9で乗り切ったことで得られたものを感じる勝利だった。
収穫あったサキドリトッケン
2着ナムラコスモスはスローペースで外枠3番手と、脚を溜めにくいポジションでなんとか踏ん張った。前に壁が作れない状況でペースダウンを察知して対応するのは簡単ではなく、そこを乗りきったからこそ、ポジションの優位性をいかせた。まずは桜花賞出走を確定させた事実が大きい。
3着アランカールは序盤、無理をしない作戦だった。現状は末脚まで負担をかけない乗り方がベストだろう。勝ちに行くためにはもう少し成長がほしいところ。直線はタイセイボーグに並びかけるかという場面もあったが、一瞬で離されてしまった。
それでも上がり最速で追い詰め、最後は3着に食い込んだ。切れ味はそん色なしも、レース全体を通じると未完成な部分も目立つ。それだけ伸びしろがあるということであり、おそらく中距離なら、もっと切れる脚を使えるだろう。
佐賀のサキドリトッケンは11着。初芝のJRA重賞で上がり3位33.2を記録した。スローペースのアシストもあったが、序盤も極端に置かれることなく追走できた。状況を考えると上々のレース内容で、もう少しキャリアを重ねていけば、同世代相手なら戦える。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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