【クイーンC】良血ドリームコアが連勝で重賞制覇 器用さと瞬発力を兼ね備えた完成度の高さを示す
勝木淳

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明暗分けたスローペース
昨年の勝ち馬エンブロイダリーが桜花賞を制したクイーンCはドリームコアが好位から抜け出し、重賞初制覇。2着ジッピーチューン、3着ヒズマスターピースで決着した。
22年2着スターズオンアースがその後、春牝馬二冠を制するなど、かつてよりクラシックで結果を残しつつある冬の重賞は年々、出走馬のレベルが上昇機運にある。今年も阪神JF2着ギャラボーグが参戦してきた。一方でオープン馬は4頭しかおらず、賞金加算のチャンスは1勝馬にも十分あった。
結果、1、3着はオープン馬(2勝馬)。賞金加算に成功した1勝馬は2着ジッピーチューンだけ。牡牝ともクラシックに向けた戦いは険しく、日を追うごとに絞られていく。もちろん、クラシックが競走生活のすべてではなく、一部ではあるが、生涯一度の貴重なシーズンであることは揺るがない。
クイーンCの舞台は総合力勝負の東京芝1600m。まだまだ3歳牝馬には厳しい。全4戦逃げたヒズマスターピースも前走GⅠを除けば、スローペースばかり。飛ばす理由はない。好位勢も突っかける意識が薄く、当然、レース序盤は速くならなかった。
前半800mは12.3-11.2-11.5-11.8、46.8。隊列が決まるや3コーナーにかけてペースを落としていった。勝ったドリームコアは内枠を利用して巧みに3番手のインをとった。
ここ2戦は中団から差す競馬をしていたが、C.ルメール騎手が臨機応変に立ち回ってみせた。前に行かせたぶん、ドリームコアがすこし逸るような雰囲気を出したが、馬群に入れることで落ち着かせていった。
大人びたレース運びをみせたドリームコア
中盤以降は11.8-11.4-11.3-11.3。4コーナーまで仕掛けて出る馬はいない。みんな、余力たっぷりで直線に向き、後半600mの上がり勝負へ突入していった。
イン3番手のポケットに入ったドリームコアは周囲も楽な手応えで走っており、進路がない。スローの立ち回りとしては絶妙なポジションだが、唯一のデメリットは進路取りの難しさにある。ライバルたちも簡単には譲ってくれない。
だが、2番手タイムレスキスが追い出し、高速上がりに対応できなくなったタイミングを逃さなかった。そこまで力を溜め、一瞬で割って出られるよう態勢を保ち続けた人馬の集中力が勝負を決めた。
母ノームコアは必ずしも器用に立ち回るタイプではなかったが、娘は器用で瞬発力もある。どちらかというと、叔母のクロノジェネシスを感じる。
序盤で優位なポジションを確保しに動いたルメール騎手の戦略とドリームコアの集中力が勝利を呼び込んだといえる。戦うごとに急速にレベルアップしていくクラシックにおいて、自在な立ち回りは大きな武器になるだろう。
母は賞金加算に向けて落とせないフラワーCとフローラSで3着に敗れ、惜しくもクラシック出走を果たせなかった。そう考えると、性能に加え、完成度の高さも目立つ。クロノロジストの系統は成長力豊富な晩成の血であり、ドリームコアもまだまだ強くなる可能性を秘める。
昨年2歳リーディング3位のキズナは母の父ハービンジャーと組み合わさると、直線が長い外回りで力を発揮する。阪神芝1600mでは【1-1-0-2】。ハービンジャー特有の鈍さが薄れ、好位から瞬発力を繰り出せる。桜花賞も楽しみだ。
本来の走りができなかったギャラボーグ
2着ジッピーチューンは隣のドリームコアを意識した競馬が好走を呼んだ。道中はドリームコアの背後に潜み、4コーナーで早めに外に出し、進路を確保。伸びる形をつくった。結果的に先に全開になった分、仕掛けが遅れたドリームコアに見劣ってしまったが、東京マイルを正攻法で勝負に出られたのは価値がある。
父ロードカナロアらしいスピードと瞬発力を備えており、マイルなら相手が強化されても崩れないのではないか。
3着ヒズマスターピースは国枝栄厩舎所属の牝馬。多くの名牝を育てた名伯楽だけに、ここは狙いどころだったか。
赤松賞から阪神JFは着順こそ違えど、アパパネと同じローテーション。引退まであと少し。9R箱根特別にはアーモンドアイの初仔アロンズロッドが出走しており、師の管理馬が走るたびに思い起こすことが多い。
残り2週間。国枝厩舎を堪能したい。ヒズマスターピースは厳しい競馬を経験した直後だったが、今回は一転してスローペースで逃げられた。これは収穫だろう。次につながる競馬だった。
1番人気ギャラボーグは9着と崩れた。はじめての左回り、東京、関東への遠征と慣れないことが重なり、直線で真っ直ぐ走れず、本来の走りができなかったか。今回は経験を積んだと考え、本番に向けて立て直してほしい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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