【東京新聞杯回顧】 トロヴァトーレが“総合力勝負の東京マイル”で輝く 持続力型のレイデオロ産駒が春の大一番に名乗り
勝木淳

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強靭な体幹の持ち主トロヴァトーレ
冬の東京から初夏の安田記念へ。東京新聞杯はトロヴァトーレが制し、重賞2勝目。2着ラヴァンダ、3着ウォーターリヒトで決着した。
先手をとったメイショウチタンは昨年も逃げを打ち、前半800m46.1で離し気味に逃げた。今年はエンペラーズソードからハナを奪う形で前半800mは46.3。前半のラップ推移は昨年とさほど変わらない。
ところが後半が大きく異なり、昨年800m46.5に対し、今年は45.9。完全な上がり勝負になった。攻めに攻めた昨年と比べ勢いがなかったという見解もあるが、好位勢がメイショウチタンに楽をさせなかったといえる。
昨年3着に残った結果に加え、ブエナオンダ、エンペラーズソードら勢いがある先行型が早めに捕まえに動いたのも大きい。これら先行勢に中団以降もついていく形になり、縦長にならず、ほぼ一団で進んだため、結果的に上がりの速い競馬になった。
後半600mは11.4-11.3-11.3。全体的に余力をもって直線を迎えた。その証拠にこのレースは10着オフトレイルまで0.4差にひしめいており、上がり600m33.9を切ったのが11頭もいた。
こうなると直線はせめぎ合い。スペースの奪い合いに発展する。勝ったトロヴァトーレは馬群に突っ込む形で体力を温存し、直線で一旦、進路をつくりかけるも、内からオフトレイルが進路を切りかえ、外のウォーターリヒトとの間で挟まれてしまった。
だが、それに厳しく抵抗し、進路を逃さなかった。C.ルメール騎手の執念もあったが、トロヴァトーレの体幹の強さが光った。完全に挟まれる形になっても、決して走りに乱れがなく、加速が落ちなかった。これだけ速い上がりの競馬になると、ブレーキを踏めば、アウト。強靭な体幹が差し切らせたといっていい。
レイデオロ×エンパイアメーカー×ソニンク
トロヴァトーレの体の強さは父レイデオロ、ひいてはキングカメハメハの血を感じる。ダービー馬レイデオロは少し鈍い産駒が目立つものの、そこはやはり適性の幅広いキングカメハメハ系。リオンディーズやサートゥルナーリアのようなオールラウンダーだ。
中山と東京マイル重賞の勝ち馬を出したのはその証でもある。芝ダート、マイル、中長距離と母系との組み合わせ次第で様々なタイプを送る。
ちなみにレイデオロ×母の父エンパイアメーカーは今年の2月1日までのデータで【14-2-6-18】勝率35.0%、複勝率55.0%と非常に高い。それも芝ダートに偏らず走り、1600~2000mで結果を出す。
次位はダイワメジャーの勝率20.0%のため、レイデオロは持続力型の血と相性がいい。さらにトロヴァトーレはソニンク牝系の出身であり、母の母ライツェントからはディアドラ、フリームファクシがいる。土台にある持続力に長けた血がレイデオロと相まって、総合力勝負の東京マイルで輝いた。もうひとつ上を目指せる器であることはまちがいない。
惜しかったシャンパンカラー
2着ラヴァンダは大混雑する直線で最内を真っ直ぐ抜けてきた。内枠を最大限に利用した迷いなき戦略が光った。岩田望来騎手のこの手の割り切った姿勢は潔い。
馬群が全体的に外に広がったのもアシストにつながった。アイルランドTの勝ち馬であり、東京の決め手勝負には強く、春は瞬発力勝負になりやすいヴィクトリアマイルで輝きを放ってくれるだろう。
3着ウォーターリヒトは昨年の勝ち馬で昨秋マイルCS3着馬。今が充実期のマイラーであり、好走は納得。一方で同じ位置にいたトロヴァトーレ、ラヴァンダに伸び負けた。2頭はゴールまでしっかり末脚を伸ばしたが、こちらはゴール前で少し脚色が鈍った。
ドレフォン産駒らしく間隔を詰めてくると変わってきそうだ。もっとも勝率が高いのは中2週の14.6%。ウォーターリヒトも中5週以内【3-2-4-3】。全4勝中3勝をあげている。
4着シャンパンカラーは直線で進路を切りかえる場面すらなければと悔やまれる。ゴール前の末脚は際立っていた。昨年の安田記念でも似たような競馬をしており、ポテンシャルはさすがGⅠ馬といっていい。
ややエンジンのかかりが遅く、東京では輝く一方で高速決着に弱いという難しい適性の持ち主であり、好走ゾーンはやや狭い。NHKマイルカップと同じ道悪の東京という条件が回ってくれば、一発にかけてもいい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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