【日経新春杯回顧】ゲルチュタールが春の飛躍期す重賞初制覇 理想の展開を作ったファミリータイムはクビ差に泣く

勝木淳

2026年日経新春杯、レース結果,ⒸSPAIA

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勝ち筋に持ち込んだ1、2着馬

冬の京都名物、日経新春杯はゲルチュタールが勝ち、重賞初制覇。2着ファミリータイム、3着リビアングラスで決着した。菊花賞4着以来のゲルチュタールが危なげない取り口で重賞タイトルを獲得した。上位3頭の4コーナー通過順は2、1、3番手。いわゆる前残りの競馬になった。

それもそのはずで逃げ馬らしき馬が見当たらず、展開予想はどうやってもスローペース。思い切って前に行けば残れるだろう。そんな気配が漂っていた。

それを察知したのが11番人気ファミリータイム。昨夏から条件戦を好位抜け出しのスタイルで連勝しており、先行策の予想はあった。昇級初戦の中日新聞杯では1番人気に推され、7着。2000m重賞特有の流れに戸惑ったのか、やや消極的な立ち回りになってしまった。

今回は距離を400m延ばし、逃げ馬不在、ゆったりいける京都芝2400mと先手をとれる状況はそろっていた。シチュエーションを読んだ松山弘平騎手の判断が当たった。ゲルチュタールが追いかけてきたのは誤算といえば誤算だったが、1、2コーナーに入っていく600m通過後から12.7-12.8-12.5-12.8-12.7と息を整えるのに十分すぎるラップが並ぶ。

京都は3、4コーナーにアップダウンが待ち受けており、たとえスローであっても、それを打開すべくまくって進出するのはご法度に近い。特に競走馬として完成している古馬であれば、我慢できずに前へという場面もない。

淡々と流れたことで完全に前残りの競馬になっていった。下りに転じるラスト800mからは11.9-11.5-11.2-11.7、46.3。差し馬勢はファミリータイムとゲルチュタールにこのラップを踏まれては逆転する術はなかった。


遅い流れに対応したゲルチュタール

ゲルチュタールは逃げるファミリータイムを追いかけつつ、前で受けたことによって勝機を見いだせた。530キロの雄大な馬体と跳びの大きなフォームのバランスが特徴であり、菊花賞はやや窮屈な競馬になったのが痛かった。それでも4着に残っており、京都との相性はいい。

スローペースのなか、馬群で揉まれる競馬を避け、持ち味を最大限に発揮するための策が見事にハマった。遅い流れへの対応力をみても、春の淀への期待が膨らむ。一方で菊花賞、日経新春杯とメンバーがやや手薄だった感は否めない。この先、相手強化で今日のような競馬ができるか。そこは見どころだろう。

ファミリータイムはタイム差なし、クビ差2着で涙を飲んだ。追いかけてきたのがゲルチュタールでなければ振り切れたのではないか。序盤でじわっと先手を奪い、中盤は単騎マイペース。ペースも十分すぎるほど落とした。下りからの動き出しも完璧に近く、上がり600m34.4のまとめも見事だった。

持続力に長けた父リアルスティールと母の父ガリレオの組み合わせは重くなるイメージもあるが、そこは時計が少しかかる今の京都の馬場にマッチした。かえすがえすも重賞を勝てる条件がそろっていた一戦であり、このクビ差は痛恨だった。あと一歩。重賞を勝つにはその一歩が近いようで遠い。改めて先頭でゴールを駆け抜ける難しさを感じた。


長距離もおもしろいマイネルケレリウス

3着はリビアングラス。昨年の京都記念2着以来の重賞好走だった。やはり京都は得意コースであり、外回りの2200m以上では安定した先行力をみせる。ファミリータイムと同じく冬特有の少し時計を要する馬場とスローペースという好走条件がそろっていた。

こちらは好走ゾーンが狭めの印象もあり、京都に絞って狙うのもよさそうだ。ただし、昨年の日経賞は稍重馬場が幸いし、0.1差4着に粘っており、遅い馬場になった際には他場でも巻き返す可能性が出てくる。先行力が形成する安定感は状況によって武器になる。

先行勢が上位を占めるなか、差し馬勢で上位に顔を出したのが4着マイネルケレリウス。最後はリビアングラスが苦しくなり、半馬身まで詰めてきた。父ルーラーシップは2011年日経新春杯の勝ち馬。当時は56.5キロを背負い、好位から上がり600m34.4で圧倒した。

母マイネカンナといえば、兄に09年天皇賞(春)を勝ったマイネルキッツがいる。この血筋はサッカーボーイの血を受けたタカラカンナが枝葉を広げた。長距離、平坦に強く、ルーラーシップとの相性がよさそうだ。マイネルケレリウスも今回の4着をきっかけに長い距離にシフトしていくと面白いのではないか。


2026年日経新春杯、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。

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