【鳴尾記念回顧】舞台巧者デビットバローズが2馬身差完勝 コース適性と展開ががっちり噛み合う

勝木淳

2025年鳴尾記念、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

絶妙だった外4番手

6月から12月に時期が戻った鳴尾記念はデビットバローズが勝ち、重賞初制覇。2着センツブラッド、3着マテンロウレオで決着した。

季節が夏から冬に動き、さらに舞台が芝外回り1800mに変更された一戦は、結果的に阪神芝外回り1800mの古馬重賞が誕生した恩恵を受けた馬が勝った。デビットバローズは同条件の大阪城Sに2年連続出走し、2→1着。ワンターン、直線が長い1800m、かつ急坂があって適度に時計がかかるコースがベスト。重賞タイトルを手にするにはこれほど条件がそろった競馬はない。

レース内容もコース巧者らしい安定感があった。先手を争うショウナンマグマ、ナムラエイハブ、ドゥラエレーデが先を急ぐなか、好位外の4番手につけ、離れた先行集団を引っ張っていく。

序盤600mは12.5-10.6-10.8、33.9。ショウナンマグマが内から外の2頭を突っぱねたことで、序盤の入りはかなり速い。1000m通過も57.1と前はペースを落とさない。先行3頭は厳しかろうという読みもあり、外の4番手は絶妙だった。

開幕週なので、内を狙いたいところだが、このまま隊列が勝負所まで進めば、前の3頭は最後に末脚を失くす。内にいると下がってくる馬をさばかなければならない。外から交わされる態勢をつくれたのも、完勝の要因だろう。


デビットバローズの狙いどき

後半800mは11.9-11.5-11.5-11.7、46.6。上がり600m34.7と外回りのわりに極端に速いラップを刻まなかったのもデビットバローズに幸いした。前走しらさぎSは芝外回り1600mでラスト11.2-11.1-11.6、33.9。11秒台前半が2度も記録される形だと、マイル戦の流れと合わせて苦しい。1800mなら対応力も変わってくる。

鳴尾記念はそんな厳しいラップが後半になかったので、完勝につながった。2馬身差快勝はコース適性と展開どちらもがっちり噛み合った結果といえる。

血統的には父ロードカナロア、母の父サンデーサイレンスとマイル戦に対応できる力は持っているものの、6歳になり、追走に余裕が出る1800mがよさそうだ。母フレンチビキニは阪神牝馬S2着ベルルミエール、新潟2歳Sを勝ったヴゼットジョリー、ファンタジーS2着ベルスールを出し、繁殖として社台ファームに貢献した。

その最後の産駒がデビットバローズ。ラストクロップがヴゼットジョリーに続く2頭の重賞ウイナーに就いたのは牧場にとっても感慨深いだろう。母の産駒は速攻系のイメージだが、デビットバローズは晩成傾向で、重賞・オープンでの好走も5歳以降。まだまだ楽しめる。

得意条件の重賞は必ずしも数多くはないが、その分、狙いも絞りやすい。買う側も外回り、1800m、適度な流れといったキーワードを組み合わせて、最適なタイミングで味方につけられる。


外枠が痛かったグランヴィノス

2着センツブラッドはデビットバローズとほぼ同じ位置のインから進め、徹底してラチ沿いを狙って、抜け出した。ショウナンマグマら先行勢が少し外を走ってくれたことも幸いし、最内を真っ直ぐ抜けられた。馬場読みがハマった印象も強い。

こちらも白百合S、ラジオNIKKEI賞と1800mで連続2着の距離巧者。上記2レースも流れがやや速く、適度に時計がかかる競馬だった。前走カシオペアSは人気を裏切ったが、休み明けも影響したようだ。こちらもデビットバローズと似た適性を感じる。

3着マテンロウレオは実績を考えれば、センツブラッドを差したかったところだろう。こちらは内で下がっていく先行勢の真後ろに入ってしまい、パスするために追い出しを待たされ、進路を切りかえる動作が入ってしまった。

イン狙いの作戦である以上、致し方ない面はある。センツブラッドにハナ差届かなったのは、そんな事情があったはず。条件を選ばず、きさらぎ賞の勝利から、3歳秋アンドロメダS以外はすべて重賞に出走して、この結果は立派だ。

1番人気グランヴィノスは4着。外枠に入り、デビットバローズを外からマークする形になり、勝負所で外を回らされ、伸びを欠いた。こちらも通ったコースの差だろう。枠順が響いた。

晩成の血ハルーワスウィートの仔だけに、まだまだこの先もある。どちらかというと、軽い競馬向きであり、流れもベストではなかった。悲観する材料はない。

2025年鳴尾記念、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。

《関連記事》
【鳴尾記念】結果/払戻
【鳴尾記念】新条件・阪神芝1800mのコース傾向から浮上 チャレンジC上位のオールナット&グランヴィノスが中心
【鳴尾記念】前走好内容で重賞級の力あり 勝率30%、複勝率60%超えの好データあり【動画あり】