【菊花賞】ディープの血に“スタミナ強化”の配合が光る 傾向合致の有力2頭

坂上明大

菊花賞の傾向と注目血統馬,ⒸSPAIA

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傾向解説

3歳牡馬クラシック最終戦・菊花賞。2021~22年は阪神競馬場での開催となりましたが、全馬が経験のない3000mへの大幅距離延長の方が、適性面での影響力ははるかに大きく、結果に直結する要素といえるのではないでしょうか。本記事では血統面を中心に、菊花賞のレース傾向を整理していきます。

超長距離戦で重要なのが馬体重。牡馬クラシックのレース別の3着内馬平均馬体重を比較すると、皐月賞>日本ダービー>菊花賞、の順であり、成長分も加味すると数字以上に菊花賞好走馬の馬体重が小さいことがわかります。

人間の短距離ランナーとマラソンランナーの体格を見てもわかる通り、長い距離を走るうえで過剰な筋肉は重荷でしかありません。 もちろん、フレームが大きければ馬体重は重くなるため一概に馬体重だけで判断できるものではありませんが、筋肉量が少なく低燃費な馬体に注目することは長距離適性を測るうえで重要なヒントになるのではないでしょうか。

牡馬クラシックレース別 3着内馬の平均馬体重(2015~2024年)
皐月賞:490.7kg
日本ダービー:483.1kg
菊花賞:481.1kg

馬体重別成績(単勝オッズ49.9倍以下),ⒸSPAIA


<馬体重別成績(単勝オッズ49.9倍以下)>
~479kg【4-6-4-23/37】
勝率10.8%/連対率27.0%/複勝率37.8%/単回率55%/複回率124%
480kg~【6-4-6-50/66】
勝率9.1%/連対率15.2%/複勝率24.2%/単回率68%/複回率76%
※過去10年

血統面で注目したいのはディープインパクト。同馬の種牡馬入り直後は「芝のマイラーが多い」や「もって中距離まで」と言われた時期もありましたが、現在は菊花賞5勝、天皇賞(春)4勝という素晴らしい成績を挙げています。

ディープインパクトはミオスタチン遺伝子型がT/T型(長距離型)であり、骨格も大きくなかったため、「スピードがあり」「大柄で」「早熟気味」の繁殖牝馬と多くつけられてきました。

そのため、産駒の多くがマイル~中距離で強さを発揮したことは事実ですが、ディープインパクト自身は競走成績の通り、芝長距離戦で優れたパフォーマンスを発揮する種牡馬というわけです。

ただ、後継種牡馬の多くはスピードを強化して成功しているため、超長距離戦においては父ほどの信頼感はありません。ディープインパクトの母母Burghclereを刺激してスタミナ面を強化している産駒を探したいところです。

ディープインパクト内包馬(単勝オッズ49.9倍以下),ⒸSPAIA


<ディープインパクト内包馬(単勝オッズ49.9倍以下)>
該当馬【6-4-4-19/33】
勝率18.2%/連対率30.3%/複勝率42.4%/単回率100%/複回率140%
※過去10年

注目血統馬

前記の傾向に合う注目血統馬を2頭ピックアップしました。

☆エリキング
3代母User Friendlyは1992年英セントレジャーなど長距離GⅠを5勝した名牝。母ヤングスターはShirley Heightsの4×4を持つ瞬発力型で、芝2200mの豪GⅠ・BRCクイーンズランドオークスでは血統通りの末脚を披露して差し切り勝ちを決めています。

ディープインパクト系キズナ産駒の本馬もトモの薄い末脚強化型で、大トビのフットワークからも直線の長い芝中長距離戦が得意条件。前走馬体重510kgの大型馬ではありますが、本馬に関してはフレームの大きいタイプなだけに、スレンダーな馬体からも長距離適性を疑う必要はありません。

脚をタメる競馬を続けてきた経験も大きな強みで、3000m戦でも息の長い末脚を披露してくれるでしょう。

☆ミラージュナイト
母ラキシスは2014年エリザベス女王杯勝ち馬で、母の全弟サトノアラジンも2017年安田記念勝ち馬。本馬の兄には芝2200~2400mで4勝を挙げるマキシがおり、本馬は父にバゴを配した形です。

バゴ×ディープインパクトはHeight of Fashion≒Burghclereの3×4を形成する点が特徴で、この組み合わせからは2021年菊花賞4着馬ステラヴェローチェが誕生。母が中距離馬だった本馬は同馬以上にスタミナ面に優れ、菊花賞適性はメンバー中屈指の良血馬です。

菊花賞の傾向と注目血統馬2頭,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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