【スプリンターズS】トウシンマカオのGⅠ初制覇に期待 セントウルSは3着も最も強い競馬
貴シンジ

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
今回は9月28日(日)に中山競馬場で行われるスプリンターズステークス(GⅠ)について、下記3つのファクターを組み合わせるコンプレックスアナライズで分析を行っていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の内容」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった17頭のうち除外対象のアスクワンタイム以外の16頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。
重要データ:それぞれのステップごとの好走パターン

スプリンターズSは秋の中山で行われる最強スプリンター決定戦。前走レース別に直近10年の結果を見てみると、大きく分けて3つのパターンからの好走が多い。
1つ目はセントウルステークス(GⅡ)組。スプリンターズSを占ううえで最も重要な前哨戦だけあって、ここからは4頭の勝ち馬が出ている。
ただし、過去10年の成績は【4-4-1-44】で単勝回収率29%、複勝回収率61%に留まる。4頭も勝ち馬が出ているにも関わらず、これだけ単勝回収率が低いのは人気馬が勝利しているということだ。
事実、勝った4頭は全て3番人気以内。人気馬ということは前走着順も良いケースがほとんどで、セントウルS組のスプリンターズS勝ち馬を振り返ってみても、最も前走着順が悪かったのは2015年ストレイトガールの4着。それでもスプリンターズSでは1番人気だったから、セントウルS組は前走で好走した人気馬を狙うのが定石となる。
ところが、今年のセントウルSを制したのは8番人気のカンチェンジュンガ。スプリンターズSもそこまでの上位人気にはならないだろう。狙うのであればママコチャ(2番人気2着)かトウシンマカオ(1番人気3着)となる。
2つ目は安田記念(GⅠ)組。ここは該当馬が少ないなかで【2-1-1-5】複勝率は44.4%もあるが、今年の登録馬に安田記念からの臨戦となる馬はいない。
ちなみに、こちらも単勝回収率は60%止まり。勝ったのは2020年グランアレグリア(安田記念1着)と2017年レッドファルクス(同3着)の2頭で、ともに安田記念好走からスプリンターズSに挑み、当日1番人気に推された実力馬であった。
最後は夏競馬からの臨戦組。なかでも注目すべきはキーンランドカップ(GⅢ)、北九州記念(GⅢ)、CBC賞(GⅢ)の3つのレースからの臨戦だ。
いずれもサマースプリントシリーズ対象競走で、3レース合算の成績は【3-3-6-56】。単勝回収率は50%となっている。勝率4.4%は決して高くないが、勝ち馬は3番人気2頭に8番人気が1頭。2022年のジャンダルムは前走北九州記念17着から勝利している。
レース全体の単勝回収率が52%しかなく、近年は比較的人気サイドの決着となっているスプリンターズSにおいて、穴馬を狙うのであれば夏競馬から参戦してきた馬を狙うのが良いだろう。
前走の内容:セントウルS
今回は1着カンチェンジュンガ、2着ママコチャ、3着トウシンマカオ、7着ヨシノイースターの4頭が出走を予定しているセントウルSについて分析する。
今年は前半3F33秒0、後半3F34秒4と比較的ペースが流れ、開幕週ながら先行馬より後ろであればどの馬にもチャンスがあったという展開になった。
勝ったカンチェンジュンガは後方待機で、直線はママコチャよりも外、トウシンマカオよりは内から差してくるという内容だったが、コーナーでは最内を回り、直線に入ってすぐにスペースが開いたという点では理想的な競馬と言える。展開がハマった感は否めない。
一方、2着ママコチャは4番手のインを追走。逃げたカルチャーデイがラスト180mあたりで脚が上がってしまい、速めに抜け出す格好になった分ソラを使ってしまったことと、久々で仕上がりも十分ではなかったことが敗因とみる。展開が勝ち馬に味方していなければ勝っていても不思議ない内容だった。
そんな中、最も見直したいのが3着トウシンマカオ。枠が7枠14番と外目だったことで仕方ない面もあるが、レースは終始外々を回る展開でロスの多い競馬。勝ったカンチェンジュンガがインを回って直線だけ外に切り返したのに対し、トウシンマカオは溜めるところを作れなかった。
また、久々ながら前走比マイナス14kgの大幅馬体減ということもあって仕上がりも今一つ。それでもラストはしっかり脚を伸ばして3着に入っているから最も強い競馬といえる。今回きっちり仕上がれば、先着を許した2頭に対しての逆転はもちろん、勝ち負けまで見えてくるだろう。
血統解説:トウシンマカオ、ママコチャ

・トウシンマカオ
日本での牝祖は祖母サスペンスクイーン。この一族は4代母Rose Bowlを牝祖とした別の枝も日本で走っていて、2017年に小倉記念(GⅢ)と新潟記念(GⅢ)を制したタツゴウゲキも近親にあたる。
母ユキノマーメイドは現役時に芝中距離で4勝を挙げた実績馬で、繁殖としても2020年マイラーズカップ(GⅡ)で2着と好走したベステンダンクなど、8頭がJRAで勝ち上がりを決めている。今回のメンバーでも活力はトップレベルだ。
トウシンマカオ自身はビッグアーサー×スペシャルウィークという組み合わせだが、年齢を重ねてビッグアーサーらしい硬さとスピードが出てきた印象。前からでも後ろからでも自在に競馬ができるのがこの馬の強みで、1200mはベスト。パワーがある配合でもあり、中山では2024年オーシャンステークス(GⅢ)勝ちと昨年のスプリンターズSで2着という実績がある。
これまでGⅠのタイトルは獲得できていないが、間違いなく今のスプリント界ではトップクラスの実力者で、ここでGⅠ初勝利となってもおかしくないだろう。

・ママコチャ
日本での牝祖は3代母ウェイブウインドだが、祖母シラユキヒメがその後継として一族の枝を伸ばしている。
この一族は日本に入ってくる前に6代母Milongaを根幹として繁栄した。Milonga自身はイタリアオークス2着の実績がある一流馬。アメリカで広がったファミリーではあるものの、ダート一辺倒というわけではなく、Milongaの良さを継承した芝向きの産駒も出ている。
日本では2018年キーンランドC勝ち馬ナックビーナスもこのファミリーだ。持続力を活かした競馬をするタイプが多く、成長力を兼ね備えている馬が多いのが特徴。何よりソダシの全妹ということでもデビュー時から注目を浴びた。
父クロフネから牡馬であればダート特化タイプになっていた可能性も高いが、牝馬とあって柔らかさがあり、芝でOPクラスまで上り詰めた。ソダシと同様に速い芝への適性が高く、体型もよく似ている。
これまでの戦績を見ても分かる通り、パワーに優れた血統で直線に急坂があるコースを得意としている。2年前のスプリンターズS勝ちの実績からもわかるように、中山芝1200は国内で最も得意なコースの一つだ。トウシンマカオだけでなく、本馬にも注目したい。
Cアナライズはトウシンマカオを推奨
今回のCアナライズではトウシンマカオを推奨する。
実力的にはママコチャの方が少し上という印象もあったが、前走は確実にトウシンマカオの方が強い競馬をしていた。両者とも中山芝1200は得意コースで、良い勝負を見せてくれそうだ。
1番人気が予想されるサトノレーヴは前走海外からの勝ち馬が出ていないというデータ面の割引材料もあるが、血統から見ても中山は得意とは言えない。実績や馬柱の綺麗さから人気は集めそうだが、今回に関してはトウシンマカオとママコチャの方が上にくる可能性は大いにある。
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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