【新潟2歳S】上位人気は堅調も…大物候補2頭は強調材料乏しく “第三極”台頭の可能性に警戒

勝木淳

過去10年のデータから見る新潟2歳S,ⒸSPAIA

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上位人気堅調

新潟2歳Sの舞台は外回り芝1600m。最後の直線は658.7mと長い。たとえ平坦であっても、体力がつき切っていない若駒には高い壁でもある。その長い直線での末脚比べが勝敗をわけるポイントであり、過去10年で上がり600m最速を記録すると、【6-2-1-1】勝率は6割を誇る。

勝った6頭の上がり600mタイムは平均が33.1で、最速は32.8。最も遅くても34.1なので、基本的には33秒台で差し切れる脚力がなければ勝てない。仕上がりの早さだけでは太刀打ちできない舞台でもある。

ここからは過去10年分のデータを使用して今年の新潟2歳Sを展望する。

人気別成績,ⒸSPAIA


人気別成績では、1番人気【4-3-0-3】勝率40.0%、複勝率70.0%、2番人気【1-1-4-4】勝率10.0%、複勝率60.0%、3番人気【3-2-1-4】勝率30.0%、複勝率60.0%と上位人気が堅調。脚力勝負となれば、前評判の高い人気馬との差は自然と出てくる。ようはスローペースであっても展開に恵まれることが少ない。最後の最後の地力勝負を乗り切る根拠を問われる。

人気薄となると、8番人気【0-0-3-7】複勝率30.0%、10番人気以下【0-2-0-40】複勝率4.8%ぐらい。キャリアが浅いからこそ、人気の盲点が生まれにくく、前評判が頼りになる。

所属別成績,ⒸSPAIA


新潟競馬場を巡る地の利は関東圏より関西圏にある。2020年~2025年8月10日の新潟全レースを対象としたデータでは、関東馬(美浦)の勝率5.9%に対し、関西馬(栗東)9.1%と関西に軍配があがる。

夏の新潟(7~9月)に限ると、主場開催で自ブロック制にもかかわらず、関東馬5.9%、関西馬9.5%。そもそも仕上げが早い傾向にある関西馬は2歳重賞でも圧倒的であり、新潟2歳Sはなおさらだ。関西馬(栗東所属)【7-3-3-44】勝率12.3%、複勝率22.8%に対し、関東馬(美浦所属)は【3-7-7-58】勝率4.0%、複勝率22.7%と単勝は関西、連軸なら関東という傾向がみえる。

今年は派手な勝ち方で新馬を突破した関東馬が目立っており、このデータがどう影響するか興味深い。

リアライズシリウスは大物なのか

前章で触れた、目立つ関東馬とは東京芝1600mの新馬で1.2秒差をつけて勝ち上がったリアライズシリウスだ。父は欧州名マイラーの新種牡馬ポエティックフレア。受胎率が低く、現在、シンジケートも解散されている。この状況であらわれたリアライズシリウスが大物なのか否か。新潟2歳Sの裏テーマのひとつだ。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA
前走新馬・距離別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別成績では、1戦1勝馬にあたる前走新馬が【7-6-8-60】勝率8.6%、複勝率25.9%と馬券圏内の大半を占める。詳しく調べていこう。

新馬組の距離内訳をみると、前走1600mが【5-4-5-22】勝率13.9%、複勝率38.9%と抜けている。やはり若駒は距離変化なく2戦目に挑む形が望ましい。上記リアライズシリウスのほかに、関西馬フェスティバルヒルも該当する。母はミュージアムヒルなので、ひとつ上の兄は皐月賞馬のミュージアムマイル。2世代続けての大物登場となるだろうか。

前走新馬・1600m・競馬場別成績,ⒸSPAIA


さらに深堀りして前走マイル組の競馬場別成績をとると、東京は【1-3-1-7】勝率8.3%、複勝率41.7%。連軸向きではあるが、それほど勝ちきれない。関西馬が強いデータと同じく、中京【2-1-0-6】勝率22.2%、複勝率33.3%など関西圏【3-1-1-8】が優勢だ。ただ、中京は開催が7月から8月に移っており、今後は傾向に変化が出てくるだろう。フェスティバルヒルが当てはまる阪神は【0-0-1-2】なので、強調材料とはいえないのが痛い。

また、距離変化はおろか競馬場も変わらない新潟は【1-0-3-7】勝率9.1%、複勝率36.4%。東京と同じく単勝は狙いにくい。マイルの新馬勝ち馬に強調データが少ない点はレースを展望する上で覚えておいてほしい。

過去10年のデータから見る新潟2歳S,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。

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