【フローラS】6連勝中「関東馬」、5億円稼いだウインマリリン…オークストライアルの「記録」を振り返る

緒方きしん

フローラステークス思い出の記録,ⒸSPAIA

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美浦所属馬が6連勝中

27日、東京競馬場でフローラSが開催される。過去の勝ち馬にはチェッキーノやサンテミリオン、ベッラレイアなどオークスで連対した馬が多くいる、重要な前哨戦だ。2着馬にはソーダズリングやシャドウディーヴァ、3着馬にはユーバーレーベンやノームコア、ローズバドと負けた馬にも重賞馬が並ぶ。

今回はオークストライアルのフローラSの記録を振り返る。なお、データは現在の名称になった2001年以降から集計している。

毎年、関西からの遠征馬も多く出走するが、東西の勝利数は、美浦所属馬(関東)14勝、栗東所属馬(関西)10勝となる。

03年~07年は栗東所属馬が5連勝をあげ、13年〜18年の6回でも5勝と固め打ちをしているが、19年にウィクトーリアが勝利を挙げてからは美浦所属馬が6連勝中。ただしエリカヴィータが勝った22年や、ゴールデンハインドが逃げ切った23年はどちらも2~4着を栗東所属馬が独占している。かなり拮抗していると言っていいだろう。

調教師、騎手の勝利数トップは?

調教師の勝利数ランキングは以下の通り。

1位 3勝 角居勝彦師(栗東)
2位 2勝 安達昭夫師(栗東)、田村康仁師(美浦)

この3勝という記録は前身である4歳牝馬特別を含めてもトップタイの数字。4歳牝馬特別を含めると伊藤雄二師、稲葉幸夫師、藤沢和雄師も3勝を挙げている。

安達師は04年メイショウオスカル、06年ヤマトマリオン、田村康仁師は08年レッドアゲート、09年ディアジーナと、いずれも短期間で2勝をあげた。

特に田村康仁師の2勝はどちらも内田博幸騎手とのタッグ。内田博幸騎手はほかに13年デニムアンドルビー、15年シングウィズジョイでも制覇しており、計4勝は騎手部門でトップだ(2001年以降。4歳牝馬特別を含めると大崎昭一騎手も4勝)。

角居勝彦師が送り出した3頭の勝ち馬

■2005年 ディアデラノビア
最初にフローラSで勝利を挙げたのが本馬。オークスでもシーザリオ、エアメサイアに続く3着と好走した。その後も06年ヴィクトリアマイル、06年エリザベス女王杯で3着、07年京都牝馬S、07年愛知杯で勝利など牝馬重賞を盛り上げ続けた。

母としてもディアデラマドレ、ドレッドノータスという2頭の重賞馬、ディアデルレイ、サンマルティン、グランディアという3頭の重賞連対馬を送り出している。孫世代からもクラヴェルがエリザベス女王杯で3着に入るなど、今後も枝葉を広げていきそうだ。

■2013年 デニムアンドルビー
こちらもオークスで3着と好走した。その後も13年ジャパンC2着、15年宝塚記念2着など牡馬と互角以上の戦いを繰り広げ、多くのファンに愛された。

引退後はクロフネやブリックスアンドモルタル、エピファネイアなどを種付けされるも、JRAでデビューしたのは現状、モーリス産駒の1頭のみ。その1頭は今年サートゥルナーリアとの間に初仔を出産している。

■2018年 サトノワルキューレ
M.デムーロ騎手のエスコートも光り、ノームコア、サラキアなど素質馬を相手に勝利。オークスではアーモンドアイに敗れ6着だったものの、その後も牝馬重賞を盛り上げた。馬券には残念ながら絡まなかったが、ローズSや阪神牝馬Sで上がり最速を繰り出すなど素質の高さを見せ続けた。

初仔のサトノワーグナーは今年2歳を迎えた。順調であれば年内にその勇姿が見られることだろう。

賞金ランキングにはモズカッチャンや「二刀流」ヤマトマリオンの名前も

フローラSの勝ち馬はその後、様々な方面で活躍を繰り広げる。勝ち馬を獲得総賞金順に並べると下記の通り。

1位 5億6582万円 ウインマリリン
2位 3億8368万円 デニムアンドルビー
3位 3億3278万円 ディアデラノビア
4位 3億188万円 モズカッチャン
5位 2億3090万円 ヤマトマリオン
※地方、海外賞金含む

モズカッチャンは17年に12番人気でフローラSを制して馬連配当3万2010円の波乱を巻き起こした。その後オークスで6番人気2着、秋には秋華賞3着→エリザベス女王杯1着と女王の座まで駆け上がった。

ヤマトマリオンは5歳シーズンから本格的にダートへ転向すると、08~09年にかけて東海S、クイーン賞・TCK女王盃を制覇。中央獲得賞金が1億3420万円、地方獲得賞金が9670万円という「二刀流ホース」となった。

牡馬相手、海外勢相手でも実力を見せつけたウインマリリン

獲得賞金1位(うち海外賞金は2億1392万円)のウインマリリンは、オークスでは三冠牝馬デアリングタクトの2着と好走。活躍はここで終わらず、本領発揮は古馬になってからだった。

4歳の初戦を牡馬混合重賞のAJCCに定めると、そこで6着と善戦。続く日経賞では菊花賞馬ワールドプレミアらを相手に勝利を収める。4歳シーズンは以降も天皇賞(春)5着、オールカマーで勝利と、圧倒的な存在感を見せつけた。

5歳になると札幌記念3着、エリザベス女王杯2着と引き続き中距離路線を盛り上げた。そして冬には香港へ渡ると、各国の強豪を相手に香港ヴァーズを勝利した。

翌年には渡米してブリーダーズカップフィリー&メアターフに出走。12頭中4着と好走し、またもや多くのファンを沸かせた。その愛くるしい仕草や見た目からファンの多い馬だったが、さらに実力も兼ね備えたスーパーアイドルホースだった。

今年はどのようなアイドルホース候補生が勝利を収めるのだろうか。その後の歩みも含めて注目だ。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。

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