【中山記念】過去8年はGⅠ馬未勝利、延べ23頭が敗退 ソウルラッシュに複数の懸念事項あり

逆瀬川龍之介

中山記念2025-ソウルラッシュに黄信号?,ⒸSPAIA

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昨年の“最優秀マイラー”に複数の不安材料

中山記念はこの時期に古くから組まれている伝統の一戦だが、他のGⅡとは趣が違う。JRAのホームページでは「近年は、本競走のあとに3月末のドバイ国際競走、4月末の香港・クイーンエリザベスⅡ世カップといった海外のレースに臨む馬も見られるようになった」と紹介されているが、まさにその通り。

金鯱賞が大阪杯、日経賞と阪神大賞典が天皇賞(春)の前哨戦という位置づけなのに対し、中山記念出走馬の「その後」は様々。そして近年は春のドバイ&香港に向けての最重要ステップレースの地位を確立しつつあるのだ。

では、海外遠征前の実績馬は人気に応えているのか? 実はそうでもないから馬券が難しい。ヴィクトワールピサやドゥラメンテのような単勝オッズ1、2倍台の1番人気馬が勝ち、本命党を喜ばせたのは昔の話。意外に思われるかもしれないが、直近でGⅠ馬が勝利したのは16年のドゥラメンテなのだ。

そこで以下に17年以降のGⅠ馬の成績を列挙したので見てほしい。

<2017年>
3着 ロゴタイプ(7番人気)
5着 ヴィブロス(4番人気)
7着 ヌーヴォレコルト(6番人気)
8着 リアルスティール(2番人気)

<2018年>
2着 アエロリット(5番人気)
5着 ペルシアンナイト(1番人気)
8着 ヴィブロス(3番人気)

<2019年>
2着 ラッキーライラック(6番人気)
3着 ステルヴィオ(2番人気)
4着 スワーヴリチャード(4番人気)
5着 エポカドーロ(3番人気)
6着 ディアドラ(1番人気)

<2020年>
2着 ラッキーライラック(2番人気)
3着 ソウルスターリング(6番人気)
4着 インディチャンプ(4番人気)
5着 ペルシアンナイト(5番人気)
7着 ウインブライト(3番人気)

<2022年>
7着 ダノンザキッド(1番人気)

<2023年>
4着 シュネルマイスター(4番人気)
5着 スタニングローズ(3番人気)
11着 ダノンザキッド(2番人気)

<2024年>
3着 ジオグリフ(4番人気)
4着 ソールオリエンス(1番人気)

驚くべきことに延べ23頭が未勝利。1番人気と2番人気が4頭ずついながら、【0-3-4-16】の勝率0.0%、連対率13.0%だから、かなり低調といえる。これはなぜか。その最大の理由は、GⅠ馬の最大目標が中山記念ではなく、その先のビッグレースにあるからだろう。実際、上記23頭の次走は【5-3-2-13】勝率21.7%、連対率34.8%となっており、結果を残している。

中山記念では実績を評価されて人気を集めるものの、先を見据えた仕上げとあって、伏兵に足元をすくわれるのだ。また、秋のGⅠ戦線で体力を消耗した馬にとって、2月末~3月頭の中山記念は少し早い始動戦。寒い時期でもあり、体調管理が容易でないことは想像がつく。

今年の中山記念には、昨年のJRA賞最優秀マイラーに選ばれたソウルラッシュが参戦予定だ。昨秋は富士Sの2着をステップにマイルCSへ挑み、鮮やかな差し切りでGⅠ初制覇を果たした。そして続く前走の香港マイルでもヴォイッジバブルの2着に健闘。明けて7歳だが衰えはなく、それどころか今まさに充実期の雰囲気すら漂っている。

ただ、不安材料も山積みだ。21年12月の1勝クラス以降は17戦連続でマイル戦を使われており、中距離戦の出走歴はあるものの芝1800mは今回が初めて。この先にドバイ遠征を視野に入れているので、いわゆる100%の仕上げでもないだろう。

また、昨年のマイルCSで素晴らしいリードを見せた団野大成騎手も、意外なことに中山芝は通算34戦して【0-3-2-29】と未勝利。人気馬に騎乗する機会が少なかったとはいえ、気になる数字ではある。

この二重三重のマイナス要素を、ソウルラッシュが覆せるかは正直微妙。穴党には、少なくとも2着か3着、願わくは馬券圏外に沈むことを期待し、高配当狙いの馬券を組み立てることをオススメしたい。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。

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