【中山記念】芝1800mで指数ベストのシュネルマイスターが本命候補 穴馬は好位の内を立ち回れるドーブネ
山崎エリカ

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今開催の中山芝は標準的な馬場
Cコース使用の1回中山から、Aコース替わりの開幕週で行われる中山記念。極端に内が有利な馬場状態ではないが、例年、好位の内を立ち回り経済コースの利を生かせる馬が活躍している。
今開催は昨年同様に時計を要しており、トーラスジェミニ、ショウナンマグマ、ドーブネと逃げ馬が多くなったここは、パンサラッサが逃げた昨年のようにペースが速くなり、外差しが届く可能性も考えた。しかし中山芝1800mはスタート後に坂を上るため、前述の逃げ馬ではそこまでペースを引き上げられないと見ている。
やはり好位の内を立ち回れる馬が、上位争いの中心となりそうだ。
能力値1~5位の紹介

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【能力値1位 ヒシイグアス】
一昨年の中山記念の覇者。同レースでは8番枠から五分のスタートを切って、好位の外を追走。前3頭がペースを引き上げて行ったが、それらを追い駆けずに好位馬群の先頭4番手で脚をため、3~4角からじわっと進出。4角で内のケイデンスコールとともに前との差を一気に詰めて4角では先頭列の直後。ラスト1Fでは内から捌いて上がってきたケイデンスコールとの叩き合いになったが、これをクビ差で捻じ伏せて優勝した。
本馬はその後、さらに成長を見せて香港Cで2着、そして前走の宝塚記念では、国内トップクラスの馬たちを相手に堂々の2着となった。この宝塚記念はタイトルホルダーがペースを引き上げて行く中で、10番枠からまずまずのスタートを切って、楽な手応え2番手まで上がり、そこから好位の中目を追走。道中ではやや折り合いを欠く場面もあったが、それを落ち着かせながら追走し、3~4角では4列目の最内から最短距離を通して、4角で前のアフリカンゴールドの外から中目を捌いて3列目で直線へ。そこから外のディープボンドと併せてしぶとく伸びて同馬を交わし、ラスト1Fでバスラットレオンを交わすと、タイトルホルダーに2馬身差まで詰め寄る、驚きの好内容だった。本馬が前走で記録した指数は、今回のメンバーでは1位タイのかなりの好指数だった。
前走同様の走りができるならば、当然勝ち負けになるだろう。しかし、今回は昨年の宝塚記念以来のレース。昨年の宝塚記念での激走はかなり疲れを残したと推測され、そこから立て直しながらの休養明けとなると、さすがに100点の状態には持ってこられないだろう。能力の高さは文句なしだが、今回は今後に向けての叩き台の意味合いが強いと見る。
【能力値2位 ダノンザキッド】
昨秋の毎日王冠の3着馬。同レースは緩みなく流れて、差し、追い込み馬有利の展開だったが、外枠発走から好位の外を追走。3角手前で外からじわっと2列目まで位置を押し上げて、0.2秒差に善戦した。もっと脚をタメていれば、勝ち負けまであったのではないかと感じさせる内容だった。
本馬は昨年の中山記念では7着に敗れているが、パンサラッサが逃げて、中山記念としては珍しいほどのハイペースとなった中で、15番枠から出遅れ、後方から2番手を追走。向正面の下り坂で勢いに乗せて捲りを図ろうとしたが、結果、捲り切れずに3~4角で外を回らされる距離ロスが生じ、7着に敗れた。
この中山記念の前半4F46秒3-後半4F48秒8という、かなりのハイペースを考えれば、結果的には無謀な騎乗だったと言わざるを得ない。
3走前から北村騎手に乗り替わり、差し馬となったあたりから好転。マイルCSや香港Cでも脚をタメる競馬で2着と善戦している。今回は1番枠と枠順にも恵まれ、3~4角の内々で上手く脚をタメて行ければ、上位争いが期待できるはず。
【能力値3位 シュネルマイスター】
芝マイルG1で1勝2着2回3着1回の実績馬だが、自己最高指数を記録したのは、2021年の毎日王冠という指数面から見ると中距離適性の馬。毎日王冠では1番枠から出遅れ、後方から道中包まれたままの競馬。後方外から向正面で位置を押し上げた、同年の安田記念の覇者ダノンキングリーに大きく差を広げられてしまった。3~4角でも後方2番手の中目だったが、直線序盤で外に出されると、ラスト1Fで3馬身はあったダノンキングリーとの差を一気に詰めて、アタマ差で勝利した。
昨秋のスプリンターズSでは9着に敗れたが、これは距離不足によるものが大きい。15番枠から外々を回ったにせよ、促されて中団の外を確保したが、徐々に位置が下がり後方外からというような追走に忙しい競馬になってしまっている。
その次走のマイルCSでは、3~4角の中団中目で包まれて直線序盤で進路が作れず、仕掛けが遅れてしまったことを考えると5着でも上々。進路を作ってからの伸びは、さすがのものを見せていた。前走の香港マイルは調子落ちで大敗してしまったが、陣営の言うように遠征がダメなのだろう。昨年のドバイターフでも見せ場なく、9着に敗れている。立て直されての今回は、ドバイターフ大敗後の安田記念で2着に巻き返したような変わり身が期待できる。今回の本命だ。
【能力値4位 ラーグルフ】
昨秋の3勝クラス・甲斐路S、前走の中山金杯と2連勝中の上がり馬。前走は3番枠からまずまずのスタートを切って好位の中目を追走。向正面で外目に出して3~4角でも外。4角でクリノプレミアムに上手くフタをして3列目で直線へ。序盤ですっと加速して2列目まで上がり、ラスト1Fで逃げ粘るフェーングロッテンを捉え、中目を捌いて伸びてきたクリノプレミアムをハナ差で振り切って優勝した。
前走は4角でクリノプレミアムを外に出さなかったことで、同馬は進路が塞がって、ワンテンポ待って上がってくる形になったが、クリノプレミアムにスムーズな競馬をされていたら、着順が入れ替わっていたと推測される。完璧なレースぶりだった。
今回はさらに相手強化の一戦。前走からさらなる上昇度があればチャンスがあるが、今回は13番枠で距離損の大きい競馬になることが予想される。
【能力値5位 イルーシヴパンサー】
昨年の東京新聞杯の優勝馬。そして前走の京都金杯も優勝しているように、芝1600m戦に好走実績が集中している馬。しかし、5走前に芝1800mのノベンバーSでは、好位直後の中目で折り合って、最後の直線で狭いスペースを割って伸びて勝利したように、芝1800mもこなせる距離ではある。
また休養明けの前走、京都金杯を優勝したことから、昨春以降のスランプ状態からは立ち直ったようだ。また前走の京都金杯は、自己最高指数を記録する走りだったわけではないことから、そこまで大きな疲労は残さず、体調面は順当に上向いてきそうだ。
ただやはりマイルで脚をためて瞬発力を生かす競馬が身上の馬だけに、中山開幕週で勝ちを意識する競馬をするようだと、距離が響いて最後に伸びきれないかもしれない。
穴馬は好位の内々を立ち回れるドーブネ
本馬は昨春のクラシックの出走は叶わなかったが、10月に戦列復帰すると阪神芝1800mの2勝クラスと3勝クラスを連勝した。東京芝2000mの前走、白富士Sでは1番枠から好スタートを切って、スピードにものを言わせてハナに立ち、後続を引き離して行く競馬。3~4角で脚をタメて直線で再加速したが、サリエラに差されて2着に敗れた。
このことから決め手勝負になりがちな高速馬場の東京芝よりも、中山の持続力勝負の方が合っている感がある。今回はトーラスジェミニやショウナンマグマなど、逃げたい馬が揃っているが、前々走では折り合いもついていたので、2列目からの競馬でも問題はないはず。4番枠で内々を立ち回れる強みと4歳馬の勢いで、相手強化のここでも通用する可能性に懸けたい。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ヒシイグアスの前走指数「-26 」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.6秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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