【ターコイズS】ミスニューヨーク連覇 流れに左右されない現役屈指の中山巧者

勝木淳

2022年ターコイズSのレース結果,ⒸSPAIA

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タフさと成長力を備えたミスニューヨーク

トップハンデ56キロ、最軽量53キロと上下差3キロしかない混戦のハンデ戦はミスニューヨークの連覇で幕を閉じた。昨年は前後半800m45.4-47.4のハイペースを後方追走、4コーナーで7、8頭ほど外を回る競馬で直線一気。今年はローザノワールが控え、ライティアが先手をとる予想外の隊列。前後半800m47.0-46.5とスローに近い流れを中団外目から余裕の抜け出し。流れに左右されない強みは中山巧者の証であり、価値ある連覇でもある。

ターコイズS連覇は17、18年ミスパンテール以来2度目だが、ミスパンテールは3、4歳でのもの。ミスニューヨークは4、5歳での連覇達成だった。活躍期間が比較的短い牝馬同士の重賞で2年連続勝つことは珍しい。JRA牝馬限定重賞4、5歳での連覇となると、グレード制導入後の84年以降で7頭目。しかも3歳勢と対戦する6月以降では、06、07年府中牝馬Sデアリングハート、19、20年エリザベス女王杯ラッキーライラック、21、22年クイーンSテルツェットの3頭。記録が近年に集中しており、牝馬の活躍期間は長くなったといえる。

ミスニューヨークは3歳紫苑Sで重賞初出走。秋華賞、エリザベス女王杯と走り、自己条件卒業、4歳時は年間8戦目でターコイズSを制した。今年は重賞ばかり5戦走って、3、10、4、4、1着。馬券圏内は中山2回。牡馬相手の京成杯AHも0.1差4着なので、本当に中山と相性がいい。

特に外回りのマイル戦はコーナーが緩い3コーナー付近で外から進出できるので走りやすい。この日もここで余裕ある先行勢にじわりと差を詰め、射程圏に入れつつ、勢いをつけて回ってきた。かつては前半、後方待機が目立ち、直線でインに入って前が開かないといった競馬も多かったが、今年は中団で流れに乗れ、安定感が出てきた。不器用さが薄れ、かつ中山で崩れなくなった。3歳から長く重賞戦線を進み、5歳で完成の域。タフさと成長力を備えた魅力的な牝馬だ。

ウインシャーロットはスピードをいかせる舞台で

2着ウインシャーロットは真ん中から内側の馬たちが好発を決めるも、ローザノワールを意識したのか、控えるなかで外から番手をとり切ったことが大きい。東京1400m連勝で中山は取りこぼしが多いイメージだが、今回も外枠からうまく流れに乗っての2着とイメージ通り。ペースが遅かったことも手伝い、4コーナー抜群の手応え、ほぼ馬なりで直線に向きながら、最後の最後でミスニューヨークに捕まった。中山は脚の使いどころが難しそうだ。馬体重プラス14キロで510キロ。迫力ある体はもっとスピードをいかせる舞台で見てみたい。

3着12番人気フィアスプライドは大外枠で発馬直後、外へ飛ぶ場面もあり、最後尾から。大野拓弥騎手らしい腹をくくった騎乗だった。4コーナー大外進出の荒っぽい競馬で差し脚を伸ばし3着。上がり33.5を記録した。外がよさそうな芝も味方につけたが、3勝クラス突破もこの舞台で内から直線一気。決め手は充実しており、今後も面白い存在になりそうだ。中山外回り、東京など末脚を伸ばせる舞台で狙いたい。

1番人気5着ママコチャは2歳ファンタジーS以来の重賞挑戦。条件戦を勝ち上がり、着実に競馬を覚えてきた。好位から立ち回れ、安定感はあるが重賞はそれだけでは足りない。スローでごちゃつき、勝負所から直線にかけて、進路どりに苦労した面もあった。トリッキーな舞台より、シンプルなコースで流れに乗る競馬ならもう少し前進もありそうだ。

3番人気アナザーリリックは7着。スローだったこと、マーカンド騎手に乗り替わったことで、今回は後方ではなく、中団追走も直線は伸びなかった。じっくり溜めた競馬でここまで来た馬。現状は末脚勝負に徹した方がよさそうだ。


2022年ターコイズSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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