【中日新聞杯】ハンデ戦らしい大接戦！　キラーアビリティとプログノーシスで分かれた明暗

2022/12/12 06:00

SPAIA編集部

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この記事のレース

中日新聞杯

GⅢ

12月10日(土)　中京11R

1～7着まで大接戦

中日新聞杯はハンデGⅢらしく、今年も大接戦。1～7着までがクビ、クビ、ハナ、クビ、クビ、クビ差で、この間わずか0.2秒。乗り方ひとつでいくらでも結果が変わりうる差。しかも中京芝2000mは長い直線がありながら、3・4角は下り坂の影響もあって外を回ると脚を削がれる、繊細なコース。与えられた枠でどう戦うか、各騎手の手腕も問われる一戦だった。

その激戦を制したのはキラーアビリティと団野大成騎手。昨年末のGⅠ・ホープフルS以来、およそ1年ぶりの白星だった。やや出負け気味のスタートになったが、少しだけ促して中団のイン。3F目から13.2-12.7と緩んだこともあって道中は行きたがったが、馬群の中でなんとかなだめる。下り坂に転じる後半5F目から11.3-11.1-11.2-11.5-12.4と急激にピッチが上がる早仕掛けの展開のなか、団野騎手は4角を出るまで内で待機。そこで温存した脚が、坂を上がってから弾けた。前を行くマテンロウレオをゴール前で捕まえて勝利。文句なしの好騎乗だった。

4年目の団野騎手はこれで重賞3勝目、所属する斉藤崇史厩舎の管理馬では重賞初勝利。騎手を育て、自厩舎のGⅠ馬でチャンスを与えた師にも称賛が送られて然るべきだろう。

「復活」というより……

今年、キラーアビリティの春は皐月賞から始まった。内が伸びない馬場傾向の中で内枠、やや出遅れ。終始内を回って0.9秒差13着に敗れた。ダービーは折り合い重視の後方待機策で、4角16番手から追い込むも6着。夏を休養に充て、迎えたアルゼンチン共和国杯は出負けして再びの後方待機から、上がり33.8秒というこの馬にとっては精一杯の末脚を使いながらも0.5秒差の8着に終わった。

決め手に長けた馬ではなく、東京のような広いコースよりは、中京や中山のようにちょっと上がりのかかるコースで2000m近辺という条件が合うのだろう。一部で「復活」という見出しも躍っていたが、単に合わない条件でのレースがたった3度続いていただけと見るのが妥当ではないか。

しかし、これは決してダービーやアルゼンチン共和国杯への出走を批判しているのではない。長めの距離で、道中折り合って終いを伸ばすことを教えたからこそ、今回の競馬がある。急がば回れ。これだから競走馬というのは面白い。来年は金鯱賞や中山記念、大阪杯といった“小回り質”のコースに出てくるのを楽しみにしたい。

上手く行かなかったプログノーシス

団野騎手の好騎乗に導かれたキラーアビリティとは対照的に、もったいない一戦となってしまったのが1番人気4着プログノーシス。折り合いという点で、ここまで実戦で教え込んできたことを崩したくないという陣営、藤岡佑介騎手の意図はおもんぱかるところだが……。

先頭の1000m通過61.9秒に対し、後方に構えたプログノーシス自身の通過タイムは手動計測で推定64.0秒程度。前後半64.0-55.5ぐらいで走っている計算だ。4角では内から5頭目あたりを回っての追い上げ。上位入線のキラーアビリティ、マテンロウレオ、アイコンテーラーがいずれも内を通っていたことを考えると、このロスも大きかった。

それでいて上がり3Fは最速の33.2秒。着差クビ、クビ、ハナのところまで追い込んできたのだから、馬の能力はすさまじい。川田将雅騎手が週中のPCR検査陽性により、この日は騎乗できず。たらればを言っても仕方ないが、操縦の難しい馬ゆえに、4戦4勝の主戦が乗れていれば結果も違ったのでないか。

間隔をとりながら慎重に使われてきた大器だが、これで2戦続けて賞金加算に失敗。痛恨だ。来春のGⅠ戦線に間に合うだろうか。なんとか間に合ってほしい、それだけのポテンシャルは見せつけている。