【2歳馬ジャッジ】兄姉にGⅠ馬3頭の超良血馬グランヴィノス GⅠの舞台でまた大魔神が笑うか

山崎エリカ

10月2週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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10月2週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はサウジアラビアRCを勝利し、2連勝で重賞制覇を飾ったドルチェモアや、兄にシュヴァルグラン、姉にヴィルシーナやヴィブロスを持つ超良血馬グランヴィノスなどが出た、10月9、10、11日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

10月8日(土) 東京2R 優勝馬 スペンサーバローズ 指数―7(ダート) 評価B
デビュー戦は芝、今回は2戦目で初ダートとなったスペンサーバローズ。本馬は7番枠から出遅れたが、芝地点で手綱をしごいて前につけた。ダートに入ると少し置かれて下がったが、徐々に位置を上げていき、4角では好位の最内。直線では前を行くブレイゼストを目標にスパートし、最後にきっちり差し切った。

ラスト2Fは12秒3-12秒5と大きく減速していない。3着馬には6馬身3/4差を付けた。今回の上位2頭スペンサーバローズ、ブレイゼストは今回が初ダート。今後ダート路線での活躍が期待できそうだ。

10月8日(土) 東京5R 優勝馬 タイセイクラージュ 指数―6 評価A
15番枠から好発を決めて、好位の外を追走したタイセイクラージュ。前に壁が作れず、少し掛かり気味だったが何とか3番手で折り合いがついた。最後の直線に向くとあっさり先頭に立ち、そこからは後続を突き放しにかかった。外からレヴォルタードが懸命に追ってきたが、最後まで差を詰めさせず、2馬身半差の快勝。3着馬に大差をつける派手な勝ちっぷりだった。

当然のことながら新馬戦としては優秀な指数を記録。今後が楽しみになる勝利だ。ただラスト2Fは11秒4-11秒6とやや減速。そこまでの余裕はなかったようだ。しかし、そうは言っても好位から伸びたレース内容は価値が高い。しっかり疲れを取れば、かなり上が目指せそうだ。

10月8日(土) 東京6R 優勝馬 ビヨンドザヴァレー 指数-5 評価A
大外18番枠からトップスタートを決め、ひとつ内の馬を行かせて2番手で流れに乗ったビヨンドザヴァレー。そのまま隊列は大きく変わらず、直線であっさりと前を捕らえラスト2Fで先頭。背後の内と外から2、3着馬が迫ろうとするが、最後までしっかり伸びて勝利した。

かなり良い内容の勝ちっぷり。同日後半よりも馬場状態が良かったことは確かだが、走破タイムの1分34秒1は同日11RのサウジアラビアRCと比較してもなかなか優秀で、新馬戦としては好指数だ。ラスト2Fは11秒2-11秒5とやや減速。レースを順調に使っていければ、面白い馬になっていきそうだ。

10月8日(土) 東京11R 優勝馬 ドルチェモア 指数―13 評価A
福島の未勝利戦を逃げて3馬身差勝ち、新潟2歳Sでは折り合う競馬で6着と伸びきれなかったグラニット。今回は1番枠からトップスタートを決め、大逃げして2着。馬の特性をよく考えた好騎乗だった。

結果は2番手でレースを進めたドルチェモアが最後の直線でも良い脚を使い、差し切り勝ち。これでデビューから2戦2勝。3着以馬には3馬身3/4差としっかり差をつけており、指数も今年の札幌2歳Sと同等なものを記録した。今後はトップレベルと戦うことになるが、そこに入ると今回の指数は優位とは言えない。今後は勝ち負けを繰り返しながら、好走のチャンスを狙っていく馬になるだろう。

今回で一番驚かされたのは、ノッキングポイントが4着に敗れたことだ。大逃げする馬が出現するとレースが締まり、人気馬にとってはおおよそ楽な展開となりやすい。同馬は一完歩目が遅く、挟まれて最後方からになったが、グラニットが大逃げしてくれたことで、力を出し切るには申し分のない流れだったはず。まさに完敗と言える。

今回は新馬戦当時の指数で走れておらず、新馬戦のダメージが残っていたという結果になった。新馬戦を好指数勝ちした馬は、疲れが出て2戦目で敗れることはよくあること。しかし、ノッキングポイントは新馬戦でラスト2F11秒2-11秒1と余裕を感じさせる内容での勝利。新馬戦時の走破タイムがそこまで速かったわけではないのに、ダメージが出てしまうとは…。競走馬は勝ったり負けたりするのが当然、今回で負けたとしても、今後巻き返してくることは当然ある。それにしても意外な敗戦だった。

10月9日(日) 東京3R 優勝馬 アヴニールドブリエ 指数-4 評価B
前走の札幌新馬戦では1番人気に支持されたが、時計の掛かる馬場で出遅れから勝ちにいく競馬をしたため、能力を出し切れなかった。今回も7番枠から出遅れたが、1馬身出遅れた前走よりはマシ。道中は後方2番手で脚をタメる競馬、前が大逃げしてくれる展開は楽だった。直線で外に出すとよく伸びて勝利した。

ラスト2Fは12秒2-12秒0と、最後まで加速できたことは高く評価できる。今回は新馬戦で厳しい形の競馬をした経験が生き、レース展開も向いた勝利ではあったが、長く使える良い脚は叩かれながら生きてきそうだ。

10月9日(日) 東京5R 優勝馬 ミッキーカプチーノ 指数―5 評価AA
東京芝2000mの1番枠を生かして好位の内で流れに乗ったミッキーカプチーノ。最短距離を立ち回り、最後の直線では逃げ馬フリームファクシを目標に動いて同馬の外に出し、ラスト1Fでしっかりと差し切った。

このレースはラスト3Fが11秒4-11秒3-11秒3と長く良い脚を使いながら、最後まで減速しないとても良いラップ構成だった。4着は6馬身半と大きく離れており、勝利したミッキーカプチーノは新馬戦としては優秀な指数を記録。今後が楽しみである。

また見逃せないのはこのレースを実質作った、逃げて2着のフリームファクシだ。本馬はさすが半姉に国際舞台で活躍したディアドラがいる良血馬らしく、素晴らしい内容の走りだった。今後の活躍が大いに期待できる。

2022年10月2週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


10月10日(月) 東京3R 優勝馬 シーズンリッチ 指数-5 評価A
新馬戦ではやや出遅れ、そこから位置を取りにいき、また抑えるというややチグハグな競馬。4着に敗れたものの上がり3Fタイム最速タイを記録しており、負けはしたが見どころのある走りはできていた。

今回はデビュー2戦目。今回も7番枠から出遅れたが、そこから位置を取りにいったことでやや折り合いを欠いた。好位にポジションを取りながら、外で壁が作れない競馬となった。弱い馬ならば苦しい形だ。このようにスタミナをロスする展開ながら、最後の直線ではしっかり伸びた。

ライバル馬を負かしにいき、結果、早仕掛けとなったため最後は2着馬に追い詰められたが、なかなか良い指数で勝利した。ここまでの2戦は全能力を発揮したとは言えない走り。これならば次走の昇級戦でもかなりやれるだろう。

10月10日(月) 東京5R 優勝馬 シンリョクカ 指数―4 評価A
7番枠から五分のスタートを決め、中団馬群で脚を温存したシンリョクカ。最後の直線序盤でスムーズに外に出されると、最後までしっかり伸びて2着に3馬身半差をつけて勝利した。

ラスト2Fは11秒0-11秒1と、ほぼ減速せずにゴールしたことは価値が高い。芝1600mとしてはかなりゆったりしたペースで、走破タイムが1分36秒6と平凡だったことも疲れを残さず、今後は順当な上昇が期待できるだろう。これからの活躍がかなり期待できる。

10月10日(月) 東京6R 優勝馬 マーゴットレーヴ 指数―5(ダート) 評価B
6番枠からスタートは五分だったが、手綱をしごいてダッシュ良く、いったんはハナを奪うかの勢いだったが、そこから抑えて2列目の内で折り合う競馬となった。その後、外の馬が内に切り込んできたため、3~4角で包まれ最後の直線では十分なスペースがなく、進路取りに迷っているシーンがあった。しかし、逃げ馬が外に行こうとする動きに反応し、狭い最内をこじ開け、そこから伸びて勝利した。

この日の東京ダートとしては目立つ走破タイムではないが、ラスト2F12秒5-12秒3と最後まで加速できた点は高く評価できる。このレースは上位3頭が4着馬を5馬身以上引き離している。地味ながら上位3頭は、ダートで面白い存在になりそうだ。

10月9日(日) 阪神3R 優勝馬 エコロアレス 指数―9(ダート) 評価B
エコロアレスは1番枠からまずまずのスタート。芝地点ではそこまで速くなかったが、ダートに入るとスピードに乗り、楽にハナに立った。そして最後の直線で追い出されると一気に後続を引き離し、2着に5馬身、3着にはそこから7馬身の差をつけての大楽勝だった。

最後は抑えていたがラスト2Fは12秒1-12秒8と減速しており、そこまで余裕があったわけではないだろう。しかし、新馬戦を好内容、好指数で勝利したことは確か。今後の活躍が期待できる。

10月10日(月) 阪神2R 優勝馬 エルデストサン 指数―11(ダート) 評価A
札幌芝の新馬戦で2着、次走の未勝利戦も芝を使われ、2着だったエルデストサン。ここまでの2戦はかなりレベルの高いレースで、相手次第ではどちらも勝利していてもおかしくない指数を記録していた。

今回はデビュー3戦目で初ダート。大外11番枠から五分のスタートを切り、最序盤は抑えていたが1角は横一線。鞍上はスピードが違うと判断したのか、そこから逃げる競馬を選択した。道中はやや後続を離したマイペースの逃げ。最後の直線ではさらに差を広げ、結果は8馬身差の圧勝。

指数も古馬1勝クラスで勝ち負けできるレベル。初ダートでこの指数を記録できるなら、今後の活躍が楽しみだ。ひょっとしたらダートを使われたことでスタミナが強化され、逃げる競馬をして芝長距離の舞台で一発、ということもありそうな気配も感じさせた。

10月10日(月) 阪神5R 優勝馬 グランヴィノス 指数-3 評価AA
大活躍をしたシュヴァルグラン、ヴィルシーナ、ヴィブロスの半弟にあたるグランヴィノス。今回は圧倒的な1番人気に支持された。レースは5番枠からまずまずのスタートを決め、そのまま中団やや後方に控える形となった。

向正面半ばでやや位置を上げ、3~4角の外からさらに前との差を詰め、4角では好位の外まで上がってきていた。ただ、最後の直線では前もなかなか良い脚で伸びており、簡単には捕まえられなかったが、ラスト1Fで鮮やかに抜け出して完勝。

ラスト2Fは11秒2-11秒2と減速していない。当日が稍重の芝2000mだったことを考えると、素晴らしい数字だ。この馬も無事なら兄、姉たちのようにGⅠの舞台で活躍する馬になっていくだろう。

2022年10月2週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)グランヴィノスの指数「-3」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.3秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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