【サウジアラビアRC】フロックじゃないドルチェモア 出世レースに相応しい勝ちっぷり!
SPAIA編集部

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大逃げで魅せたグラニット&嶋田純次
2022年サウジアラビアロイヤルカップ、1番人気はノッキングポイントで単勝1.4倍。6月東京の新馬戦で圧勝劇を演じ、その際の2、4、5着馬も既に勝ち上がり。後半のラップ構成も秀逸で、ここも軽々と突破するのではないかと思われた。
しかし、勝ったのは2番人気のドルチェモア。ノッキングポイントはまさかの4着という結果。「絶対大丈夫」といえば、野球界ならセ・リーグ優勝チームの原動力となった素晴らしい言葉だが、競馬界には「競馬に絶対はない」という金言がある。得てしてレース前には忘れてしまいがちなフレーズである。ここが難しく、そして面白い。
レースを支配したのは、間違いなく二組の人馬だった。まずはグラニットと、嶋田純次騎手。好位から無難に運んだ新潟2歳S6着から一転、遮二無二ハナを切って大逃げの形をとった。自身の前後半は46.3-47.3。やや前傾だが、速すぎることもない。ちなみに同馬主、同厩舎のミナレットが、同じ東京芝1600mのヴィクトリアマイル(2015年、18番人気3着)で打った逃げは前後半45.5-46.7。クラスと馬場の違いこそあれどバランスは似ている。ゴール寸前でドルチェモアに捕まりはしたが、この走りができるのであれば今後まだまだ活躍できるだろう。
思えば昨年、7頭立てで行われたこのレースは1~7着が1~7番人気の順での決着。単勝2.2倍の1番人気に推されたコマンドラインを負かすべく、他騎手が講じた策は前後半50.0-46.4の超スロー。だが、少頭数のヨーイドンは、新馬戦で同じような競馬を経験している人気馬たちの脅威になりえなかった。翻って今年は、スピードの出る馬場を存分に生かした大逃げ。各騎手折り合いに専念したい2歳戦、開幕週という条件で一発を狙うなら、とても理にかなった選択だ。グラニットの逃げは、“無風”だった昨年の決着に対する、一つのアンサーとも解釈できるのではないか。
ドルチェモアの可能性
そしてもう一組、レースを掌握したのがドルチェモアと横山和生騎手だった。グラニットの逃げをあえて放置して、2番手以下の集団は自らが抑え込み、スローに陥らせた。
これでまんまと逃げきられていれば「判断ミス」と言われかねないが、残り420mあたりから本格的に追い出しを開始すると、最後はきっちりと差し切った。横山和騎手、すさまじい強心臓だ。アリーヴォで小倉大賞典を勝ち、タイトルホルダーでGⅠを2つ獲り、今年はジョッキーとして1枚も2枚も進化している。
そんな好騎乗もあったとはいえ、ドルチェモア自身の上がりは最速の33.4秒。自分より後ろにいた馬たちはむしろ突き放しているわけで、決してフロックではない。新馬戦は直線が短い札幌、芝1500mでの逃げ切り。今回は未知の部分が多かったが、東京で実質スローの2番手を折り合い、これだけの脚が使えるならGⅠでも期待をかけていい。母は桜花賞馬アユサンという筋の通った血統。上質なマイラーとして育っていきそうだ。
サウジアラビアRC自体、先日の毎日王冠で復活の白星をつかんだサリオスや、グランアレグリア、ダノンプレミアムといったGⅠ馬を輩出する出世レース。ドルチェモアもこの輝かしい面々に肩を並べる可能性は十分にあるだろう。
ノッキングポイントの敗因は
最後に、やはり4着だったノッキングポイントについて考えたい。パドックから二人引きでややイレ込む様子が目立ち、スタートで出遅れ。この時点で新馬戦とは様子が違ったのだが、直線でも周囲にいた馬たちと同程度の脚しか使えなかった。そうはいっても、新馬戦1.35.3と比べれば、自身の持ち時計は1.2秒詰めての1.34.1で、上がり33.6秒。これで「力を出し切っていない」というのは酷だろう。
近親には、母チェッキーノを含め、コディーノ、サブライムアンセムなど3歳春までの世代限定重賞で活躍した馬がいる仕上がり早の血統で、同馬は1月生まれでもある。今年6月の時点で完成度が高かった反面、夏を越えてのパワーアップは緩やかだったのではないか。
前走時点で感じた他馬との差は少し詰まってしまった感があるが、それでも重賞~GⅠで上位争いできるポテンシャルは既に有している。次走が正念場だ。

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