【紫苑S】時計は平凡でも価値ある走り スタニングローズ、秋初戦を順当勝ち
SPAIA編集部

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内容的には平凡だが
紫苑ステークスは2016年の重賞昇格以来の6年で計6頭、ここの出走馬から秋華賞連対馬が出ている。右回りで直線が短い1周の2000mというのは本番とよく似た条件で、しかも西のトライアル・ローズSよりは間隔を1週長くとれる。直行を選択する陣営も増えたため、決して春のトップ層が集結するわけではないものの、前哨戦としては見事に機能しているレースだ。
今年はオークス2着馬のスタニングローズに、阪神JF勝ち馬サークルオブライフ、ほか重賞で実績のあるライラック、ニシノラブウインク、サウンドビバーチェら春の既成勢力が中心。上がり馬は2勝クラスを勝った馬がいない手薄なメンバーで、結果を先に書いてしまえば上位への台頭もなかった。
レースは外枠からサウンドビバーチェが逃げ。紫苑Sに限った話ではないが、3歳GⅠの前哨戦色が強いレースは各騎手折り合い重視で、激しい先行争いは生じにくい。1000m通過60.8秒のミドルからやや遅いペースで進み、しびれを切らしたデムーロ騎手とサークルオブライフが押し上げていった残り4ハロンからの勝負。
脱落したコルベイユをパスして早々に馬体を接したスタニングローズとサウンドビバーチェの追い比べが長く続き、クビ差だけとらえたスタニングローズが勝利した。先に動いて外を回った分、サークルオブライフの脚勢がやや鈍ると、その後ろから追い込んだライラックが3着に浮上した。
勝ち時計は重賞昇格後、良馬場の年ではもっとも遅い1.59.9。ペース差もあるのであくまで参考程度にだが、昨年はアスター賞1.36.2、汐留特別1.07.9で紫苑Sが1.58.2。今年はアスター賞1.35.8、汐留特別1.07.6と、馬場的には同じくらいの時計が出るコンディションで、昨年より1.7秒遅い決着。時計的には凡戦と言わざるを得ない。
ただ、勝ったスタニングローズは賞金的にもここはあくまで試運転というレース。馬体重は+14キロで余裕残しに見え、直線でなかなか前をかわせなかったのも休み明けのぶんだろう。実力を測っておきたい上がり馬なら別だが、こちらは既に世代上位の力を証明済み。次走へ向けてダメージが残らないであろう、という意味では、いい始動戦になったのではないか。
悩める2歳女王
2着サウンドビバーチェはマイペースの逃げ。オークスは輪乗り中に他馬に蹴られて放馬という憂き目にあったが、仕切り直しの一戦で結果を出した。こちらも+14キロの馬体で初距離にも対応するなど、収穫はあった。しかし、開幕週の中山、少頭数という条件で逃げたからには勝ち切りたかった。本番で他路線組やスタニングローズを相手にすると、ちょっと分が悪そうだ。
3着ライラックはじっくりと構え、遅めのペースにも動じず、差す競馬に徹した。前残りの流れにゴール前猛然と突っ込んできたのだから評価したい走りだが、この馬の場合は関西圏への輸送に不安がある。秋華賞では狙いにくいところ。
4着サークルオブライフは-22キロでの出走。またもイレ込んで出遅れ、マクり気味に進出する形で格好は付けたが、よかった頃の末脚は鳴りを潜めたまま。関西輸送も控える中で、馬体回復と精神面の立て直しを両立するには、時間が足りないように思われる。そもそも、条件としても直線の長いワンターンが望ましく、阪神内回りというのもどうか。
5着カヨウネンカは田辺裕信騎手らしい、後方でめいっぱい脚を溜める競馬。4角も外を回さず、突き抜けそうな手応えで直線に向いてきた。ここまでは素晴らしかったが、詰まって切り替えざるを得ず。その分、前には届かなかったが、上がり最速でいい伸びを見せた。春は勝ち上がりのために連戦で使われていたが、ひと休み挟んだことでグンとパフォーマンスを上げた。次走注目だろう。夏の新潟で重賞2勝のミルファームに、またも楽しみな素材が現れた。

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