【アーリントンC】前後半互角の総合力勝負 3歳マイル王に向けてダノンスコーピオン、タイセイディバインの可能性とは
勝木淳

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実力差が出るイーブンペース
4月2~3週で阪神芝1600mの重賞は3レース行われる。阪神牝馬S、桜花賞、そしてアーリントンC。桜花賞以外はGⅠへ向けたステップレースなので、出走馬のレベルや時計にバラつきがある。
たとえば、21年。阪神牝馬Sは前後半800m47.1-44.9、1.32.0、桜花賞45.2-45.9、1.31.1、アーリントンC47.0-47.2、1.34.2。アーリントンCは重馬場で時計を要した。古馬の前哨戦は緩急がきいたメリハリある流れ。桜花賞はちょっとレベルが違う、高次元の持続力勝負。アーリントンCも前後半のペース差が少ない締まった流れだった。
今年は阪神牝馬S46.8-46.0、1.32.8、桜花賞46.8-46.1、1.32.9、アーリントンC46.3-46.4、1.32.7。ほぼ同じ決着時計だった。アーリントンCは古馬の前哨戦と牝馬クラシック初戦とそん色ない結果になっただけではなく、先に行われた2レースが前半遅く、後半速い後傾だったのに対し、こちらは前後半がほぼ同じ、実力差が反映されやすい真っ向勝負でもあった。まして当日は季節外れの六甲おろし。正面直線は強い向かい風。1着ダノンスコーピオンのみならず、早めに先頭に立った2着タイセイディバインも高く評価したいレースだ。
昨年のNHKマイルCでは不発だったアーリントンC組、今年は最有力ではないか。
勝負強いダノンスコーピオンは東京でこそ
ジャスパークローネ、メイケイバートン、ヒルノショパン、カワキタレブリーと複数の馬がひしめく先行集団はお互いけん制し、息を入れさせない流れを作った。そのラップは12.1-10.6-11.6-12.0。阪神外回りは阪神牝馬S、桜花賞のように前半で息を入れる緩急ある流れが多いが、ここはさほどペースが落ちなかった。後半は12.2-11.3-11.1-11.8。残り600mから連続11秒台前半、かつ加速。坂下までで力のない馬は脱落。これを先頭に立ち、押し切りにいったタイセイディバインは前走ファルコンS2着でハイペース耐性を示し、かつ高速決着にも対応できる。本番も好位から堂々押し切りを狙ってほしい。
勝ったダノンスコーピオン、マイル戦勝利はデビュー戦の1回きり。7頭立ての超スローペースを上がり最速34.0で鋭く伸びた。持ち味の瞬発力を駆使し、萩Sではキラーアビリティを差し切った。朝日杯FSは前後半800m46.2-47.3の前傾ラップを経験、最後の最後にひと伸びして3着。この経験が今回もいきた印象。
前半は中団でリズムを守り、残り400~200m11.1で鋭く伸び、最後の11.8でさらに伸びた。坂をあがってから伸びるのは朝日杯FSと同じ。この力強さとライバルが苦しいときに伸びるあたりは父ロードカナロアのスピードと上手くかみ合った。共同通信杯7着でスパッとマイル路線に転換した陣営の判断が吉と出た。直線半ばからエンジン全開になるあたり、東京マイルはむしろ歓迎だ。
11.3-11.1を前で受け、ラスト11.8で伸びかけたキングエルメスも好素材であることを改めて証明。京王杯2歳Sはスローの1400mを番手から抜け出し。やや軽いところがある印象だったが、骨折休養を経て、力強さが加わった。先行勢総崩れの厳しいペースで3着は評価したい。5カ月ぶりのレースでこの競馬。反動は気になるところだが、やはりマイル路線では世代上位のスピードがある。
3歳4月に阪神で46.3-46.4という均衡のとれた持続力比べ、キングエルメス以外も決して反動がないともいえない。NHKマイルCは中2週、トライアルとしては厳しすぎたという可能性も頭の隅にとどめつつ、本番まで調整に注目したい。
これだけの競馬だったので、先行して失速したジャスパークローネ、メイケイバートン、カワキタレブリー、ヒルノショパンなどは次走以降メンバー次第で一変まである。特に逃げたジャスパークローネにとってマイル戦は距離が長かった。遠慮なくダッシュ力をいかせるスプリント戦で再浮上の可能性は高い。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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