【桜花賞】大混戦の3歳牝馬路線 ナミュール、サークルオブライフが半歩リード

坂上明大

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完成度の高い2歳女王

牝馬クラシック第1戦・桜花賞。現3歳牝馬で重賞2勝以上を挙げているのは最優秀2歳牝馬サークルオブライフのみだが、同馬も始動戦となるチューリップ賞で敗戦。勢力図の確立していない混戦状態だけに、各馬の地力と適性の整理がより一層重要となりそうだ。参考レースの内容から振り返っていこう。



【阪神JF】
10月からの連続開催の影響で内目の芝が剥げ気味だったが、極端なトラックバイアスは認められず。レースはダークペイジが気風良く逃げて前後半3F34.1-34.8。ただ、3番手以降は同34.7-34.3の平均ペースだった。ゴチャついたり、逆手前になったり、折り合いを欠いたりと、2歳牝馬GⅠらしいアクシデントの多い競馬だったが、展開自体は全馬にチャンスがある流れとなった。

1着馬サークルオブライフは中団外目で脚をタメ、直線では大外から先行勢を一掃した。エピファネイア産駒らしいストライド走法の差し馬で、スムーズに馬群を捌ければ末脚は実に鋭い。一方で次走のチューリップ賞(3着)では先行策を敢行。地力面で抜けているとは言えないが、競走馬としての完成度は世代屈指といえるだろう。

2着馬ラブリイユアアイズは好位で折り合いをつけ、ゴール板までしぶとい末脚。Haloの5・4×5・6らしい素軽いスピードが魅力で、レースセンスの良さは世代上位のモノを持っている。ワンパンチ欠けるが、大崩れは考えづらいタイプだ。

3着馬ウォーターナビレラは3番手で馬群を引っ張り、残り300m付近で単独先頭に。上位2頭には差し切られたが、本馬もレースセンスの良さは世代上位といえるだろう。ただ、Haloの4×4、Lyphardの5×4、Sir Ivorの6×5、Robertoの4×5など機動力に長けたシルバーステート産駒だけに、阪神芝1600mでは少々分が悪いかもしれない。

4着馬ナミュールは中2週で馬体重10キロ減。パドックでも後肢の蹴りが物足りず、案の定出遅れる形になってしまった。その後は序盤の速いところで巻き返し、中盤の緩んだところで手綱を引っ張って強引に減速。直線はインから盛り返したが、4角で逆手前になったことも影響して直線もスムーズな手前変換が叶わず。何から何まで噛み合わない競馬であった。負けはしたものの、最も強い競馬をしたのはやはりこの馬だろう。

5着馬ナムラクレアは最内枠からラチ沿いでジッと脚をタメ、直線では馬群を割って5着まで追い込んだ。ただラスト1Fでは1、2、4着馬に劣っており、スピード豊富な血統からも距離は1400mの方がベターだろう。

ハービンジャー産駒らしからぬ末脚

2022年桜花賞の参考レース,ⒸSPAIA


【クイーンC】
週中の降雪の影響で含水率は高め。内外のトラックバイアスは見られないが、良馬場の東京芝コースとしてはソフトな馬場状態で開催された。レースは8枠16番からスマイルアップが押して先手を主張。前後半3F35.3-34.4の平均ペースで、位置取りによる有利不利も認められない。

1着馬プレサージュリフトはハービンジャー産駒らしくスタートで後手を踏んだが、直線は上がり3F33.5の末脚でスターズオンアースやベルクレスタとの叩き合いを制した。ラスト1Fは本馬が最速。馬体重12キロ増と成長も感じられ、スタートの課題さえクリアできれば桜花賞でも楽しみな1頭だ。

2着馬スターズオンアースは直線での進路取りに苦労して少々脚を余す形に。ドゥラメンテ産駒の中距離馬で、マイルの直線勝負では分が悪いが、レースセンスがよく大崩れは考えづらい。

3着馬ベルクレスタは1枠2番から中団のインにつけたが、身動きが取れず徐々にポジションを下げてしまった。Kingmambo≒Numerousの3×2が特徴的なバランス型。極端な位置取りは合わないだろう。



好時計での快勝

【エルフィンS】
1着馬アルーリングウェイは2番手追走から上がり3F2位タイの末脚で0.2秒差の勝利。4角で逆手前になったことを考慮すると、数字以上の評価が必要だろう。また、勝ち時計1.34.0は1月のシンザン記念より0.1秒速く、開催全体でも京都金杯に次ぐ好時計。2着ママコチャはファンタジーS3着馬、そのファンタジーS1、2着が阪神JF3、5着馬だから、本馬にも世代上位の評価を与えたい。



末脚自慢の2頭が上位

大混戦の3歳牝馬路線だが、ナミュールとサークルオブライフが半歩抜けた存在か。ナミュールは粗削りながら末脚は一級品。サークルオブライフも完成度が高く、末脚は世代屈指のモノを持っている。人気薄ではアルーリングウェイの大駆けに期待だ。

注目馬:ナミュール、サークルオブライフ、アルーリングウェイ

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。



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